社外の現実を見据え、自ら変化を作り出す

1

海外展開を加速する新興国企業(EMNC)は、グローバル経営の新しい可能性を見せている。前回はその第1の特性として、その可変性の高さを解説した。食品飲料企業を題材に、今回は第2の特性として、「社外の現実を見据え、自ら変化を作り出す」行動原理を考える。

新興国企業の2つの「現実志向」

 成長市場では法規制や国際ルールが日々更新され、経済発展や競争に応じて市場ニーズもあっという間に変化する。昨日まで事業性が無かった市場に突然チャンスが生まれ、その機会を捉えた企業が急速に成長する。そのため、新興国企業(Emerging Multinational Companies:EMNC)は内向きにならない。多くのEMNCが、チャンスを生み出すそのような外部変化に根ざして行動することを徹底している。

 徹底した現実志向である彼らの行動特性には、2つの要素がある。第1の要素が、市場の成熟やM&Aの機会を虎視眈々と待ち、機会が到来すると一気呵成に攻勢をかける「Active Waiting」と呼ばれる行動特性である。さらに、第2の要素として、制度やインフラが整っていない新興国では単に機会を待つだけでなく、自らが働きかけて有利な環境を形成し、事業を創造していく戦略行動も欠かせない。

Active Waiting
チャンスを待って一気に攻める

 たとえば、メキシコで最大規模の消費財系コングロマリットである、FEMSA(Fomento Economico Mexicano,S.A.B.deC.V.)の成功が好例である。同社は持株会社FEMSAの下に、飲料(コカ・コーラFEMSA)、小売(FEMSA Comercio)の2事業を持ち、ラテンアメリカ中心に展開する。

 同社の飲料事業(コカ・コーラFEMSA)は、1979年のメキシコ国内での炭酸水ボトラー買収に始まる。1991年には、コカ・コーラの世界最大の独立系ボトラーとして統合・再発足した。その後は国内外で買収を繰り返し、現在はメキシコ、中南米、フィリピンを含む10カ国に展開している。

 もう1つの核である小売事業(FEMSA Comercio)は、1978年にメキシコでオープンした4店舗から出発した。現在はラテンアメリカ最大規模のコンビニエンスストア(CVS)チェーン「OXXO」を持ち、中~高所得者をターゲットに約13,000店を展開する。他にも複数の業態を手がけ、海外展開も進めている。

 FEMSAの成長モデルには、2つの特徴がある。第1の特徴が、巧みな「Active Waiting」である。同社は規制緩和や市場成熟などの環境変化の潮目を逃さず、機が熟すのを捉えた投資を続けている。

 具体的には、飲料事業を軌道に乗せると共に、中間所得層が増加しモダントレードが浸透した1980年代から、その潮流に乗りCVSの展開を始めた。CVSは飲料の販路として相乗効果があり、その後は高い収益性を維持しつつ驚異的な速度で出店を加速した。さらに近年は、メキシコで新たに小型ドラッグストアの需要が高まっている。そのため2013年からはドラッグストアを複数買収し、数百店を展開する体制を速やかに整えた。

次のページ  環境に自ら働きかける戦略»
1
Special Topics PR
Decision Maker 関連記事
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS