受け手を動かす「良いメッセージ」は
4つの条件を満たしている

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ジョン・ハワード首相(オーストラリア)が長期政権を築いた際の立役者であり、逆風にある幾多の候補者を当選に導いたのが、選挙ストラテジストのリントン・クロスビーである。その戦略から見えてくるものは、単に選挙に勝利する方法ではなく、ビジネスを成功に導くための定石である。第3回は、ターゲットに訴求する「良いメッセージ」とは何かを考えるうえで、4つの条件が示される。
 

「良いメッセージ」をつくる4つの条件

 2012年5月3日の投票日。ボリス陣営のキャンペーンスタッフはロンドン市内の各地で、最後の投票の呼びかけを行っていた。

 選挙対策本部としてできることがないこの日、私はクロスビーに時間をもらった。彼がどのような戦略でこの選挙に臨んでいたのか、直接聞き出すためである。クロスビーと一緒に選挙対策本部のあるオフィスを出ると、オフィスからほど近い、スターバックスに入った。そして、2階のソファー席に腰かけて話を切り出した。

 クロスビーは、戦略立案や戦術を語るなかで何度も、「キャンペーン戦略ではメッセージがもっとも重要である(message matters most)」と繰り返した。

 彼の経営するCTFパートナーズは、選挙に限らず民間企業もクライアントとして、キャンペーン戦略の立案とキャンペーン全体の運営を行っている。守秘義務からクライアント名を聞くことはないが、世間的には、ブリティッシュ・アメリカン・タバコやフィリップモリスなどのたばこ企業がクライアントの一部であると言われている。英国では、たばこのパッケージに、ブランドロゴなどブランドイメージを向上させるデザインを施すことを一切禁止する「プレーン・パッケージング」の法制化が議論されていたが、連立政権時代には見送られることとなった。これはクロスビーによるキャンペーン活動の成果だと言われている。

 彼は、「みずからの会社の強みは、媒体そのものを持たないこと」だと話す。

「私たちは、テレビ広告をつくる会社でもなければ、雑誌広告をつくる会社でもなく、政府や政治家へのロビイストを多数抱えるロビイング会社でもない。だからこそ、その時々のクライアントが実施したいキャンペーンの目的に照らして、最適のメディアミックスを選択することができる」

 手段を持たず、あくまでもキャンペーン戦略をつくり、クライアントのリソースやクライアントからのアウトソースを活用してのキャンペーン運営に特化することで、目的に対する最適の手段を用いることができる。それが彼らの強みなのだ。

 その強みの背景にある考え方が、メディアの選択は、ターゲットとメッセージに依存するということである。

 前回は、メッセージを訴求するターゲットを定義した。今回は、実際の選挙戦で定義されたメッセージを振り返る前に、一般論として、選挙戦における「良いメッセージ」とは何かを説明したい。

 では、「良いメッセージ」はどうすればつくれるのか。その条件は4つある。

 条件1:有権者にとっての選択を定義していること

 条件2:感情に訴えるものであること

 条件3:実績と将来を提示するものであること

 条件4:適切なトピックを取り上げていること

 次ページ以降、この4つを解説したうえで、最後に、ビジネスのブランド戦略におけるメッセージを例に挙げ、その共通点を示したい。

次のページ  条件1:選択を定義する(争点の設定)»
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