人事制度は社員を縛るためのものではない

対談:青野慶久(サイボウズ社長)×篠田真貴子(東京糸井事務所CFO)【後編】

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常に新しい働き方を提案してきたサイボウズの青野慶久社長と『ALLIANCE アライアンス』の監訳者で「ほぼ日」の篠田真貴子さんとの対談の後編。人事制度は社員の自由を奪うためのものではないと言う。

 

日本の大企業は、同じ人生を大量生産している

篠田:前回のインタビューで青野さんは自分がいなくなった後のサイボウズを、潰すも残すも、残った社員に託すとおっしゃいました。青野さんのおっしゃる「託す」ということも含め、社員や独立する人やパートナーと一緒に生態系を作ろうとするときの「関係性」に興味があります。

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青野 慶久(あおの・よしひさ)
サイボウズ株式会社代表取締役社長。
大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。BA・セキュリティシステム事業部営業企画部での勤務経験を経て、1997年に愛媛県松山市にサイボウズを設立、取締役副社長に就任。「サイボウズ ガルーン」など、新商品のプロダクトマネージャーとしてビジネスを立ち上げた後、事業企画、海外事業担当を務める。2005年4月より現任。育休を3度取る3児の父。

青野:サイボウズの作る組織の最も重要なキーワードは「多様性」です。この多様性という言葉は、言い換えると個性を尊重するということです。多様性というと、人はすぐ男性、女性と分けたがりますが、男性でも女性っぽい人もいるし、女性でも男性っぽい人もいます。そんな曖昧なものでカテゴライズするより、みんな違うことを前提にしたほうがずっと楽しいと思うんですね。社員に多様性があればそれぞれの興味も変わっていくので、ずっとサイボウズにいてもいいし、いなくなってもいい。1日の働き方も、長時間でも短時間でも構わないのです。

 そのうえで必要になってくるのが自立なんです。多様性を前提にすると、みんな違うので同じ制度で全員を幸せにすることはできません。日本の大企業は社員みんなが同じような人生を歩んでいるので、たとえば社宅を作ったらみんなが喜ぶわけですよ。

篠田:わかります(笑)。みんなと同じ人生が嬉しいんですよね。私が最初に入った長銀(日本長期信用銀行)もまずほぼ全員が独身寮に入って同じ青春を過ごし、社内結婚をして社宅に移っていく。私の先輩が、お子さんが同じ社宅の他の先輩の家に遊びに行って、間取りが一緒だからどこにトイレがあるかすぐにわかったよと嬉しそうに話しているのを聞いて、私には無理だと思いましたね(笑)。

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篠田 真貴子(しのだ・まきこ)
東京糸井重里事務所取締役CFO。
慶應義塾大学経済学部卒、1991年日本長期信用銀行に入行。1999年、米ペンシルべニア大ウォートン校でMBAを、ジョンズ・ホプキンス大で国際関係論修士を取得。マッキンゼー、ノバルティス・ファーマ、ネスレを経て、2008年10月、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する糸井事務所に入社、2009年1月より現職。2012年、糸井事務所がポーター賞(一橋大学)を受賞する原動力となった。この度、『ALLIANCE アライアンス』を監訳。

青野:日本の大企業は、同じ人生を大量生産しています。40歳になったら課長にならないといけない。課のトップでもないのに課長がいる組織になるのは、そうしないと社員のモチベーションを維持できないからです。つまり、人と同じ変化をすることがモチベーションになっているんです。しかし、すでに日本は成熟していて多様化できるところに来ているはずです。それなのに、いまだに同じルールや制度を当てはめようとしています。そもそも、今どき社宅を作っても若者は喜ばないですよ。

篠田:そうですね。

青野:ただ、多様性を前提にするときに大切なのは、どんな生き方をしたいかということを自分で理解し、それを発信することです。そうしないと、会社も対応できません。それが自立という言葉の意味です。どこに住みたいのか、どんなふうに仕事がしたいのか、週に何日働きたいのか、どんな人と働きたいのか。そうしたことを明確に言えるようになってくれないと、多様性を認めた瞬間に単なるカオスになってしまいます。多様性を認めることとセットで自立を求めるのが、サイボウズのこだわりなんです。

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