合理的な判断を妨げる「バイアス」の罠

消費者行動から考えるマーケティング【第1回】

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早稲田大学ビジネススクールの教授陣がおくる人気連載「早稲田大学ビジネススクール経営講座」。14人目にご登場頂くのはマーケティング、消費者行動論がご専門の守口剛教授だ。消費者行動から考えるマーケティングをテーマに、全3回でお届けする。

80年間「前年踏襲」が続く理由

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守口 剛(もりぐち・たけし)
早稲田大学商学学術院教授。
早稲田大学政治経済学部卒業。東京工業大学大学院博士課程経営工学専攻修了。博士(工学)。立教大学社会学部教授等を経て、2005 年より現職。2012年から2014年の間、早稲田大学大学院商学研究科長。 日本消費者行動研究学会会長、日本商業学会副会長、日本マーケティング・サイエンス学会理事、日本マーケティング学会理事等を歴任。マーケティングに関する研究業績や著書多数。

 人は合理的だと考えられる判断や意思決定を、常に行っているわけではない。個人や組織にとっての利益を、最大化する判断を下そうとしても、置かれている状況の影響を受けて、特定の方向へのバイアスが生じる場合が多くみられる。

 人の判断や意思決定のバイアスについては、近年さまざまな学問領域で研究が進展している。本連載で焦点を当てるマーケティングと消費者行動の領域でも、消費者心理のバイアスを扱った既存研究が数多く存在する。また、行動経済学、神経科学や脳科学など、近年注目を集めている領域においても、これらの研究が数多く行われている。

 このようなバイアスの存在を理解するために、大手食品メーカーのキャンベルスープにおける逸話をみてみよう(注1)。1990年に同社のCEOとなったデビット・ジョンソンが経営を見直している際に、高収益主力商品であるトマトスープの毎秋のプロモーションに着目した。彼は、このプロモーションの効果に疑問を感じ、担当者になぜ毎年秋に実施しているのかと質問した。その答えは、「わかりません。私が知る限りずっと秋のプロモーションとしてやってきました」というものだったという。

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