自己変革の組織メカニズム
~3つの連鎖と9つの結節点

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市場変化の先取りとステークホルダーとの継続的な関係
《市場との連鎖》

 時間軸をつなげて、持続的成長の軌道を描いても、常に時代の環境変化に敏感に反応して、変化し続けないと組織は成長できない。組織にとって、変革する必要性の気づきのきっかけになるのは、顧客だけでなく、株主や社会など、多様なステークホルダーを含む外部要因である。グローバル規模でマーケットが拡大するなかで、時代とともに変化する顧客やステークホルダーのニーズを満たせるかどうか、継続的な関係をいかに構築できるかが大切である。この持続的な変革の原動力になる外部とのつながりが「市場との連鎖」である。「市場との連鎖」を構築するうえでの結節点は3つある。

結節点<1>顧客とのつながり

 1つめは、「顧客とのつながり」である。持続的成長に向けて、市場との連鎖を強くするには、いかに顧客と持続的な関係を作れるかがポイントになる。そのためには顧客ニーズを先取りし、同時に顧客やステークホルダーからのフィードバックを組織にどう取り込むか、常に顧客に満足を与えながら絶対的な信頼を得る関係づくりが求められる。

結節点<2>ステークホルダーとのつながり

 2つめは、多様な「ステークホルダーとのつながり」である。顧客のみならず、株主、従業員、社会など多様なステークホルダーに対し、どのような価値を提供していくのか。企業が存続するには、持続的に資本効率を高めて企業価値を上げ、資本市場の評価を得ることが必要だ。また、新たな命題として、「社会課題の解決」や「社会的価値と経済的価値の両立」の重要性が増している。これらを解決することが企業を存続させる必要条件になる。

結節点<3>利益とのつながり

 最後に3つめとして、「利益とのつながり」である。「時間軸の連鎖」および「市場との連鎖」を実現するうえで、その結節点になるのが「利益」である。企業活動が「利益」を生み出すことの意味は大きくふたつある。ひとつは、利益は製品やサービスの提供を通して顧客や市場からの評価を得ていることの証明であるということ、そして2つめは、利益が将来の成長をつくり出す投資のための原資になるということである。すなわち、企業が市場や顧客に評価されてはじめて利益は正当化され、その利益があるからこそ投資が可能になり、将来的な存続・成長が可能になるというものである。

変化に柔軟な組織と組織的学習
《組織内の連鎖》

 組織にはさまざまな壁がある。新しい取り組みに立ちはだかる、経営と現場の壁、部門同士の壁、既存のルール・制度の壁など、規模が大きくなるほど組織の壁は高くなり、組織内部に断絶を生み出す。

 変革を継続していくには、いざ変わるとなったときに、その方向に対して組織内が一枚岩になることが求められる。そのためには組織の上下や左右のつながり、組織を規定する制度・ルールの新旧のつながりをいかに確保するかを考えなければならない。ここでは組織の断絶を超えたつながりを「組織内の連鎖」と位置づける。

「組織内の連鎖」の目的は、「変革を持続させる」ことにある。そのためには、変化を受け入れる柔軟な組織になること、変革に向けた組織全体の学習能力を高めることが必要である。自己変革し続ける組織には、経営トップのみならず組織全体が変化を受け入れる柔軟性がある。柔軟な組織では、部門間や組織の“壁” を超えた情報共有だけでなく、柔軟に人的リソースを移動交換できるシンプルな基盤をつくることが必要だ。

 また、もう1つの変革の持続性や再現性を担保するための視点として、組織全体から個人レベルまでの「組織の学習能力の向上」が不可欠である。組織や個人の立場を超えて知見や情報・アイデアを創出する環境づくりが求められる。

 具体的に「組織内の連鎖」を構築する結節点は3つある。

結節点<1>意思決定のつながり

 経営トップをはじめとする経営の意思決定者層での意思疎通の一本化である。組織全体で利害錯綜する断絶を排除して変革を進めるうえで、経営トップのみならず経営陣、ミドルマネジメントが一枚岩になることが大事なポイントになる。この結節点は、「組織内の連鎖」と「時間軸の連鎖」をつなぐ役割を果たす。

結節点<2>経営と現場のつながり

 市場の変化に機動的に対応して手を打てる組織をつくるうえでのポイントは、先を見越して危機感がある経営陣と、顧客の最前線に身を置き実感している現場レベルが、いかに日頃から近い関係でつながっているか、いわば経営と現場が直結した関係をつくれるかという点にある。この結節点は、「組織内の連鎖」と「市場との連鎖」をつなぐ役割を果たす。

結節点<3>組織横断的なつながり

 組織は肥大化するほどに縦割りが進行して、組織間の壁ができやすい。そうならないためには多くの人材を交流させて、ナレッジ交換ができる柔軟な組織にする必要がある。そこで求められることは、縦割りにならずに、人や情報のモビリティーを高める組織的な仕組み、共通の制度インフラ(人事制度など)の整備などである。このような組織的、制度的な基盤を整えることで、組織内の学習能力を高め、変革の再現性を高め、自己変革が継続できる組織が生み出せるのである。

 このように、9つの結節点が、それぞれ3つの連鎖を機能させ、また「3つの連鎖」同士のつながりをもたらすことよって、全体の自己変革メカニズムが動き始めるのである。
 

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