企業価値評価に「リーダーシップの質」を
取り入れよ

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近年では企業価値評価において、財務指標だけでなく戦略やブランドといった無形価値も注目されている。そしてそれらを左右するのは、企業のリーダーシップの質だ。筆者らは投資判断の材料として「リーダーシップ・キャピタル指数」を提案し、経営陣の能力や組織体制に関する10の項目を挙げる。

 

 投資家たちは近年、企業の市場価値を財務データのみでは判断できないということに気づいている。GAAP(一般会計原則)やFASB(財務会計基準審議会)の基準が義務づけている、収益やキャッシュフローや利益率といった財務報告事項は、どれも投資家がこれまで注視してきた指標だ。ところが昨今、こうした財務実績は企業の市場価値の50%程度を示すにすぎないことが判明している。また別の問題として、この手の財務データは広く公開され誰でも入手できるため、独自性のある判断材料にはならない。

 特定の企業をより深く理解すべく、投資家は無形の価値にいっそう関心を示すようになってきた。戦略、ブランド、イノベーション、システム統合、提携などである。財務指標に比べると主観的なこれらの情報を、それでも追跡・測定しようという動きも見られる。

 投資家にとって次なるステップは、これら無形の価値要素を左右するもの、すなわち「企業におけるリーダーシップの質」を注視し分析することではないだろうか。

 賢明な長期投資家は、リーダーシップが企業業績に影響を及ぼすことを心得ている。しかしリーダーシップに対する評価はたいていの場合、秩序立っていないうえに限定的だ。たとえば我々の調査によると、投資家は意思決定の基準としておよそ3割を経営陣の質に置いているが、財務実績や無形価値の評価に比べ、リーダーシップの評価には自信を持てないという。「このリーダーはカリスマ性とビジョンがあり、人材を大切にする」と評することはできても、それは往々にして直感的であり、その裏で分析はほとんど行われていない。

 投資家によるリーダーシップの評価は、場当たり的な観察ではなくもっと厳格な査定に基づくべきなのだ。優れたリーダーシップに関する調査研究ならば無数にある。それらを組み合わせて投資家にとって有益な情報として確立すれば、直感的な評価を防げるだろう。

 そのために必要となるのが、「リーダーシップ・キャピタル指数」である。これは、(ムーディーズやスタンダート&プアーズが提供する)経済的な信用格付けの指数のようなものだ。これにより、場当たり的で断片的な観察ではなく、より詳細な評価が可能となる。

 ここで注意すべきは、リーダーシップの「指数」は「規範」とは異なるということだ。規範とは求められる基準を意味するが、指数は活動の実績を評価するものだ。たとえば『エコノミスト』誌の「ビッグマック指数」は、世界各地におけるビッグマックの価格をアメリカの平均価格と比較することで算出される。これはビックマックの適正価格を示すものではなく、世界各地の生活費を測るための、大雑把だが便利な尺度である。

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