新興国企業の速く柔軟な「可変性」

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海外に展開し世界的な企業への階段を駆け上がる新興国企業(EMNC)が台頭している。EMNCにはいくつかの特性がある。その第1が、可変性の高い経営モデルである。各国での嗜好の違いから特にグローバル展開が難しい、食品飲料企業を題材に日本企業への示唆を考える。

新興国から海外展開する企業は
どのような特徴を持っているか?

 急成長する新興国企業(Emerging Multinational Companies:EMNC)の1つの特徴が、戦い方を速いスピードで変えていく「可変性」である。EMNCは、過度なこだわりをもたない。現在の姿、現在の商品、現在の得意分野は、未来には作り変えることができる。多くの新興国企業が、特定の形をいかに維持するかではなく、変わっていくことで競争力を高めていくことを信じている。

 一方で、多くの日本企業は、過去の成功、現在の売上、確立した自社の強み、今いる従業員のスキルや思いを前提に、それをそのままどう活かすかに集中していないだろうか。しかし、環境そのものが大きく変化し予測も難しいとすれば、変わり続ける力にこそ未来が宿る。そこに、EMNCと日本企業との決定的な違いがある。

 ではEMNCが見せる「可変性の高さ」とは、もっと具体的に言えば、どのような行動に表れるのか。そこには、大きく3つの切り口がある。

自らの強みを固定した
速い市場進出

 第1のパターンが、市場を求めて柔軟に進出地域を変えていく展開の速さである。たとえば、即席麺を武器に世界的食品企業への道を目指す、インドネシアのインドフード・サクセス・マクムール(以下インドフード)が例としてわかりやすい。

 インドフードは、スハルト元大統領と近い創業者スドノ・サリムが1990年に創業した、かつてのインドネシア最大の財閥サリムグループを源流とする。同グループは1990年代後半には約3兆円の売上をあげて「東南アジアの三菱グループ」と称され、銀行、食品、セメント、自動車の4大企業を核に、インドネシア経済の中枢を担った。

 しかし、スハルト元大統領の失脚と1997年の通貨危機で経営危機に陥り、食品以外の事業を売却して再出発した。現在は、三男のアンソニー・サリムがCEOとなり、50.1%を自ら保有する持株会社First Pacific(第一太平有限公司)を香港に上場させ、傘下にテレコム、インフラ、消費財、天然資源の4事業を持つ。

 同社は消費財の中核として食品事業を展開する。食品事業は事業会社であるPT Indofood CBP Sukses Makmurが担い、即席麺、乳製品、スナック菓子、調味料、栄養剤(幼児向け)、飲料など幅広いサブカテゴリーを持つ。インドネシアの国民的ブランド「インドミー」を持つ即席麺が主力事業で、母国の即席麺市場で7割と圧倒的なシェアを占める。2007年にはジャカルタ中心部に39階建ての本社ビル「インドフードタワー」を建設し、同国を代表する大企業となっている。

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