世界最強の選挙ストラテジストに学ぶ、
ビジネスを成功に導くための3つの本質

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ジョン・ハワード首相(オーストラリア)が長期政権を築いた際の立役者であり、逆風にある幾多の候補者を当選に導いたのが、選挙ストラテジストのリントン・クロスビーである。その戦略から見えてくるものは、単に選挙に勝利する方法ではなく、ビジネスを成功に導くための定石である。本連載では、筆者が選挙対策の中枢を担った英国・ロンドン市長選をケースに、戦略の本質を解き明かす。連載は全8回を予定。
 

世界最強の選挙ストラテジスト
リントン・クロスビー

 2012年5月3日。ロンドン市長選挙の投票日。

 翌日の開票を前に、保守党現職候補であるボリス・ジョンソン市長の選挙対策本部メンバーは、ロンドン市内のバーを借り切ってパーティをしていた。選挙対策本部の一員として選挙戦を戦った私は、夜10時半から始まったこのパーティに参加していた。

 投票日も終日、有権者に投票を促すキャンペーン活動を行って誰もが疲れ切っていたが、もはややるべきことはない。接戦が予想される投票結果への不安を持ちながらも、少しの安堵感とともに、若いキャンペーンチームはパーティを楽しんでいた。

 しばらくすると、ボリスが会場に入ってきた。ボリスは会場の中心にある台の上に立つと、短いスピーチを始める。

 まず、多くのボランティアで構成される選挙対策本部メンバーの、長期にわたる努力と選挙キャンペーンの質の高さに対する感謝を口にした。とりわけ、選挙ストラテジストとして選挙対策本部全体の指揮を執ったリントン・クロスビーに感謝を示し、「もし2015年の国会の総選挙で、保守党がクロスビーに選挙ストラテジストをお願いしなかったら、保守党は気が狂っている」と持ち上げると、クロスビーはそれに応えて大げさに首を縦に振った。

 ボリスは長く厳しい戦いが続いた選挙戦を振り返りながら、「それでもこうして今日まで生き延びることができた」「ロンドンの雨にもめげず、執拗な質問攻めにする国営放送BBCの攻撃にもめげず、問題が噴出した国政での保守党政権の予算発表にも耐え、そして何より、国政で苦境に立たされているキャメロン首相からのお墨付きなんかもらってしまったけれど、それでも、私たちは今日までこうして生き延びた」と持ち前の皮肉たっぷりのユーモアで会場を笑いで包んだ。

 挨拶を終えたボリスは、ダンスフロアに飛び降りると、奇妙な踊りを披露してさらに会場を盛り上げた――。

***

 本連載では、いまや世界最強とも言える選挙ストラテジストである、リントン・クロスビーのキャンペーン戦略を明らかにする。そして、そのためのケースとして、2012年5月のロンドン市長選挙において、労働党有利の地盤と情勢のなか、ボリス・ジョンソンを再選に導いた選挙の戦略を取り上げる。

 クロスビーの戦略から見えてくるものは、単に選挙に勝利する方法ではない。そこには、ビジネスを成功に導くための本質が詰め込まれてもいる、と私は考えている。

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