テスラとアップルに共通する市場参入戦略とは

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EVメーカーのテスラが蓄電池事業に参入した。戦略の専門家ロン・アドナーによれば、その成功のカギとなるのは製品力ではない。「エコシステムの継承」――つまり既存の市場における成功要素を、新たな市場に引き継いで活用できることこそが強みになるという。

 

 先頃、電気自動車メーカーのテスラモーターズが家庭用・業務用・公共電力供給用の蓄電池システムの市場に参入する計画を発表し、マスコミに大きく取り上げられた。テスラの今回の市場参入が強い関心を集めるのは当然だが、その理由は優美に設計され巧みにブランディングされた同社の〈パワーウォール〉システム自体にあるのではないと私は考える。むしろ注目すべきは、今まで製品ベースの競争が繰り広げられてきた市場を“ジャンプスタート”させるために真のエコシステム戦略を展開できる、テスラの潜在能力だ。

 蓄電池事業はここ10年来、期待はずれが続いている。既存の大企業(GE、サムスン)にしても、新興企業(最たる例は倒産したA123システムズ)にしてもそれは同じだ。だがテスラは、たとえ後発者であっても市場を変革し成功を収める可能性がある。

 テスラには、私が「エコシステムの継承(ecosystem carryover)」と呼ぶ方法を活用する能力がある。これは、既存の市場空間における既存のポジションを利用して、新しい市場空間で一気に優位を築くことだ。

 拙著『ワイルドレンズ イノベーションを成功に導くエコシステム戦略』でも論じているが、アップルがスマートフォン市場に参入し競争原理を変えることができた秘訣は、エコシステムの継承にあった。つまり、iPodのユーザー基盤を活用してスマートフォン市場を変えたのだ。通信事業者たちに従来の業界慣行からの脱却を促したのは、iPhoneの斬新性ではなかった。iPhoneという次世代機器に喜んで移行したがるであろう、iPodのファンたちによる支持が確実に見込めたことが強みだったのである。

 エコシステムの継承は市場の統合を成功させるカギとなる。このメカニズムによって、別々だった市場が1つのまとまった市場機会のように見える(結果を振り返って初めてそのことがわかるのだが)。今では忘れられがちだが、MP3プレーヤーと携帯電話はかつては別個の市場機会と見なされていた。同じことが、電気自動車とホームエネルギー管理にも当てはまる。

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