会社を辞めた後もgiveし続ける

対談:尾原和啓(Fringe81執行役員)×篠田真貴子(東京糸井事務所CFO)【後編】

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リード・ホフマンらの著書『ALLIANCEアライアンス』で提唱される働き方をまさに実践している尾原和啓さん。「好きで入った会社に嫌われるのは嫌」と明言する。企業と個人がフラットな関係で信頼関係を築くために何が必要か。同書の監訳者で「ほぼ日」の篠田真貴子さんとの対談の後編。

 

意思的にgiveし続けることが互恵的な関係を強化する

尾原:人とのネットワークの有用性を論理的に納得したのは大学生のころです。僕はゲームの「モノポリー」が好きなんですが、基本的に「商売人キャラ」なので、周りが警戒して取り引きが成立しないんです。でも。どうやって勝つか。ふたつのものを提示して、どちらかを交換しようと持ちかけるんです。そのとき、相手に優先権を与えます。当然、相手は自分が有利なほうを選択しますよね。僕は不利になりますが、人より取り引きの機会を多くつくることでそれをカバーします。それぞれの取り引きでは損をしても、人の5倍の取り引きをするから結果的に僕が勝つんですね。

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尾原 和啓(おばら・かずひろ)
Fringe81執行役員。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。阪神・淡路大震災時の避難所ボランティアの経験から、仕組みやプラットフォームに強い興味を抱く。マッキンゼー・アンド・カンパニー、リクルート、Google、楽天などを経て現職。インドネシア・バリ島在住。著書に『ITビジネスの原理』があり、新著『ザ・プラットフォーム』はKindle版ビジネス書部門で1位を獲得。

 そこから、1回ごとのgiveで損をしても、機会をたくさんつくれば結果的に強くなれるということを理解したんです。しかも、情報はシェアしても減らないので、大学生のころから毎朝20通から30通ぐらい、知り合いに勝手にニュースを送りつけるということを始めたんです。

篠田:ひとりキュレーションメディアを25年も前からやっていらっしゃる。

尾原:そうすると、何割かの人は感謝の返事をくれて、僕は情報通と見られる。互恵的な関係です。さらに言えば、相手も僕にフィードバックしてくれることで僕の送るメールの質が高まるので、互恵的な情報交換がより強化されます。その積み重ねで、僕のパーソナルなアライアンス関係が勝手に増えていくというわけです。

篠田:お話しを伺っていると尾原さんがどの会社に入社するときにも固有名詞が出てきます。尾原さんの互恵的なアライアンス関係は「個人対個人」ですね。これまで「個人対会社」という関係はなかったんですか。

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篠田 真貴子(しのだ・まきこ)
東京糸井重里事務所取締役CFO。慶應義塾大学経済学部卒、1991年日本長期信用銀行に入行。1999年、米ペンシルべニア大ウォートン校でMBAを、ジョンズ・ホプキンス大で国際関係論修士を取得。マッキンゼー、ノバルティス・ファーマ、ネスレを経て、2008年10月、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する糸井事務所に入社、2009年1月より現職。この度、『ALLIANCEアライアンス』を監訳。

尾原:僕は、基本的に入社するときに誰にコミットするかを明確にするし、この会社にこれをやりたくて入ったと明言します。ただ、すぐにやりたいことをやらせてくれないことはわかっているので、入社したらすぐに「どぶさらい」をやります。つまり、外部から来た人間ができる最も面倒くさいことを率先してやるんです。機能していない子会社の整理や、昔から放置されたままのシステムや事業に手をつけます。そこで成果を上げると、あの人はふらっと来たけど、面白いヤツだという評価になります。そこではじめて信頼されるようになり、自分のやりたいことが少しずつやれるようになっていくんです。

篠田:自分の「役立てどころ」も設計しているんですね。

尾原:そうですね。それからもうひとつ習慣があって、その会社に行く、行かないは関係なく、毎年のように転職活動をしています。ある分野の市場が芽吹くタイミングで一気に抜け出るのが僕の価値なんですが、たいていその芽は3年ぐらい前から出始めている。そういう会社に勝手に情報を送りつけて「こういうこと考えているでしょ? ちょっと面接しません?」と持ちかけると、まったく反応しない会社がある反面、いたく気に入っていただいてすぐに社長面接になる会社も少なくありません。

 Googleも、Google最初の上司が前の会社の時、3年前にコンタクトをしたときはお互い今ではないねということになりました。でも、そのあとも三ヶ月に1回はコンタクトを取り続け、いろいろな情報を提供し、人脈を紹介しました。そんなことをしたうえで3年経ったころ、彼がGoogleに執行役員として転職して「そろそろ行ってもいいと思うんですよね」と言うと、向こうも「そうだと思っていたよ」ということで話がまとまったんです。

篠田:へえ。この本で言っていることの超進化系の話ですね。

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