なぜいま新興国企業に注目すべきなのか

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「経営のグローバル化」が日本企業で盛んに議論され、欧米グローバル企業のハウツーの「型」を学習する熱が高まっている。だが、特定のグローバルモデルの真似をして「偏った視点」で新しい制度をつくっても、真にグローバルで勝てる組織にはならない。いま日本企業に必要なのは、実際に成長している組織から謙虚に学び、競争力につながる行動を起こすことである。

グローバルにインパクトを持ち始めた新興国企業

 新興国の目覚しい経済成長と世界経済の重心移動の動きは、この10年ほどですっかり定着した。そして人口動態から、このトレンドは21世紀中盤までさらに進んでいくと予測されている。

 その中で、市場としての存在だけでなく、そこで活躍する企業についても、新興国の存在感が高まっている。伝統的なモデルでは、市場や技術が成熟した先進国から企業の海外展開が進み、多国籍企業が生まれていった。しかし現在では、経済発展から企業の海外展開までのスピードがこれまで以上に速くなっている。自国がまだ途上国である段階から急速にグローバル展開を進める、新しいタイプの多国籍企業(Emerging Multinational Companies:EMNC)が台頭しつつあるのだ。

 歴史を見れば、企業の多国籍展開には流れがある。その源流の1つは16世紀以降の欧州の植民地展開の制度から始まり、19世紀には欧州で後進国(先行するイギリスに対するドイツなど)が追随し、20世紀には米国に広がった。

 日本企業も、海外展開を戦前から徐々に進めていたが、戦後から特に1980年代にかけて本格的かつ急速に海外展開を推進し、一時代を築いた。その後は、台湾や韓国等の製造業企業のグローバル展開が続いたことは記憶に新しい。現在はその裾野がさらに広がり、BRICsやASEAN、ラテンアメリカ、さらには中東諸国等のいわゆる新興国から企業が国際展開するステージが始まっている。

 ではいま具体的に、新興国からグローバルにインパクトを持つ企業がどれほど生まれているのだろうか。

 その数は想像以上に多く、そして着実に増え続けている。たとえば消費財企業のデータを見てみたい。デロイトでは、世界の消費財企業(*1)を売上が多い順にトップから250社をリストアップし、毎年定点観測している。2014年の調査では、世界のトップ250社のうち、新興国に本拠地を置く企業(*2)が41社(全体の16.4%)に上る。同じランキングで日本企業は50社(20.0%)を占めているが、企業数の比率は徐々に逆転に近づいている。

出所:Deloitte “Global Powers of Consumer Products 2015”
        レポートはこちらから

 さらに、同じ250社の中で売上成長率が高いトップ50社を見ると、そのうち半分以上(29社)は新興国企業である。これら新興国企業は、過去5年に年平均19.4%の売上成長を記録し、2013年の売上高純利益率は平均14.3%と高い。ちなみに、売上成長率トップ50社に入る日本企業は3社しかない。

出所:Deloitte “Global Powers of Consumer Products 2015”


*1 ファッションアイテム、エレクトロニクス製品、食品・飲料・タバコ、家庭用家具・設備、住宅改装用品、レジャー用品、パーソナルケア・家庭用品、タイヤのセクターに含まれる企業
*2 アフリカ・中東(トルコ含む)、ラテンアメリカ、中国(香港含む)、インド、東南アジア企業を含むが、台湾・韓国は除く。近年になって本拠地を先進国に移転した企業(アンハイザー・ブッシュ・インベブ、SABミラー、Bacardi)を含む。
 
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