ダイバーシティへの取り組みに見る
組織デザインのアプローチ

これからの日本企業に求められる人事・組織の考え方(4)

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戦略を基に組織をデザインし、望ましい企業文化を構築する。それができれば、ビジネスの結果にも反映されるだろう。こうした一連のプロセスにおいて、組織デザインは重要な位置を占めている。組織デザインで重要な役割を担うのが人事部門だ。今回はダイバーシティという具体的なテーマに即して、戦略と組織デザインについて考えてみたい。

相互に密接に関係する
組織デザインの六要素

 前回、組織デザインに必要な六つの要素を説明した。「構造」「業務」「人材」「情報」「意思決定」「報酬」である。それぞれの要素が密接に関係しており、一部分だけに変更を加えた場合、他の要素との整合性が失われてしまう可能性がある。デザイン要素に整合性がなければ、組織のバランス感覚が失われ、意図した目標を達成することができないばかりではなく、組織に経営幹部への不信感が生まれてしまう。

 だからこそ、六つの要素に先立って、確かな戦略を持たなければならない。いま話題の「女性の活躍」あるいはダイバーシティを例に考えてみよう。戦略には、なぜ女性の活用を推進するのかという明確なビジネス上の理由、女性活用の目標は何か、どういう施策を打っていくのかのを明確に説明する必要がある。戦略という上位方針に基づいて各要素をデザインし、要素間の齟齬や不整合をなくすことが重要だ。

 ただし、それは容易なことではない。

 人材採用向けのホームページなどで、社長が「女性が働きやすい職場づくりを推進しています」と力説している企業は多い。果たして、その本気度はどの程度のものだろうか。組織デザインを観察すれば経営幹部の本気度が一目瞭然にわかる。

 私が長く働いたP&Gを含めて、欧米系グローバル企業の多くはトップダウンでこの課題に取り組んでいる。ターゲットとしての目標値を持ち、全社的な活動を経営層の幹部がリードするというやり方が一般的だ。多くの場合、CEOはプロジェクトのオーナーとして、その幹部ならびに活動をサポートしている。

 ここでいう目標値として代表的なものは、マネジャーやディレクターといった職位ごとの女性比率だろう。そこには、短期と中長期の目標が必要だ。たとえば、企業全体で女性のマネジャー比率を「現状の25%から30%に引き上げる」という中期目標が決まれば、それはブレイクダウンされて各部門に落とし込まれる。日本法人は何%、○○工場は何%という具合だ。目標値を設定することには日本で賛否両論があるが、欧米での経験から見て、目標値を設定しなければ真の成果は困難であると思う。

 女性の活躍は六要素のうち人材に関わるテーマだが、他の要素から切り離された状態では成果を生みだすことができない。

 たとえば、報酬や評価。日本法人の社長が目標値をクリアできなければ、その社長の評価は下がる。報酬にも影響があるだろう。日本法人の中で、ある工場の女性マネジャー比率が改善していなければ、工場長も同様だ。

 もちろん、リーダー役を務める経営層の幹部も、目標を下回れば相応のペナルティを課せられる。だからこそ、制度や支援プログラムなどについて真剣に考える。本社と各拠点のリーダーたちは、そうせざるをえないのである。

 情報も欠かせない要素だ。現在女性のマネジャーが各部門に何人いて、何%を占めているか。そうしたスコアカード・KPIがいつでも見られる仕組みは必須である。「測っているものをデリバーする」のが組織の習性だ。いくら社長が大声で叫んだとしても、測っていなければ、目標追求への熱意や行動の総量が変革の閾値を超えることはないだろう。

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