誰もが実践できるコーチングの3つのステップ

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リーダーはコーチングの専門家にならずとも、対話によって部下を後押しできる。スタンフォード経営大学院のコーチング専門家が、「問いかける」「耳を傾ける」「共感する」という3つのプロセスを丁寧に解説する。

 

 かつてリーダーは、仕事での経験と深い知識によってその地位を獲得していた。リーダーは「答え」を知っているものとされ、やるべきことや方法がわからない部下にいつでも解決策を提供することが期待されていた。最も多くを知る存在であることが、権威の基盤となっていた。

 今日のリーダーも、自分の仕事には精通していなければならない。しかしリーダーにすべての答えを期待することは、もはや非現実的かつ不適切となった。組織があまりにも複雑化し、従来のようにすべてを把握することができないからだ。リーダーがこの変化に適応する方法の1つは、「コーチ」という新たな役割を担うことである。コーチングの手法と技術を適宜用いることによって、答えのすべてを知らなくても、また従業員に行動を逐一指図せずとも、リーダーとしての役割をうまく果たすことができる。

 コーチングとは、相手と絆をつくり、ベストを尽くす意欲を誘発し、成長を助けることである。また、必要な答えを自分自身で見つけるよう促すことでもある。コーチングは厳密な科学とはまったく異なるため、リーダーはそれぞれ自分のスタイルを見つけなくてはならない。しかしそのプロセスは、あらゆるマネジャーが探求と理解に努めるべき3つの重要なステップに分けることができる。すなわち「問いかける」、「耳を傾ける」、「共感する」という行為だ。

①問いかける

 コーチングは、「相手に埋めてもらう空白」をつくり出すことから始まる。その代表的な方法は、最初に自由回答式の質問をすることだ。私がクライアントや学生と話す時は、挨拶代わりの短い世間話のあと、「さて、まずどこから始めたいですか」と尋ねることでコーチングの開始を告げる。大切なのは、相手のどんな相談内容であれ受け入れるという態勢を整えること、そして不必要に会話を制限してしまうような前提を排することだ。

 マネジャーであるあなたは、会話に何らかの制限を設けたくなるかもしれない(「今日は予算について話す準備はしてないのだけど」)。あるいは少なくとも、あなたの用件にも触れたいという場合もあるだろう(「君の話したい内容に加えて、先週のミーティングのことも話していいかな」)。しかしそれらは必要最低限にとどめて、部下自身の重要な懸念や課題を表明してもらう余地をつくることが大切だ。リーダーは、部下が話題を切り出しづらくなるようなシグナルをついうっかり発してしまうことが多々ある。部下自身の相談事項がメインなのだということを、はっきり示しておこう。

 MITの元教授エドガー・シャインは著書『人を助けるとはどういうことか』の中で、人を支援する時に用いられる問いかけの種類をいくつか特定しているが、それらはコーチングでの対話にも非常に適している。私が上述した最初のステップ、すなわち自由回答式の質問による情報収集のプロセスを、シャインは「純粋な問い」と呼ぶ。

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