リード・ホフマンに学ぶ
シリコンバレー流・意思決定の秘訣

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「スタートアップの立ち上げは、崖から身を投げて落下している最中に飛行機を作るということ」――リンクトイン創業者リード・ホフマンの言葉だ。激しい競争環境での起業を通して彼が体得した意思決定手法は、「スピード」と「シンプルさ」の追求であるという。その教訓を元側近が語る。

 

 リンクトインの共同創業者で会長、そしてベンチャーキャピタルのグレイロックのパートナーでもある、リード・ホフマン。シリコンバレーを代表する稀代の戦略家だ。私は最近、リンクトインの会長室長としての役目を終え、その経験を基に「リード・ホフマンとの1万時間から学んだこと」という長いエッセイを書いた(英語サイト)。本記事では彼の間近で働きながら学んだ、戦略意思決定に関する2つの教訓を紹介しよう。

 リードが掲げる第1の原則は「スピード」だ。彼のよく知られた名言がある。「製品の最初のバージョンで恥ずかしい思いをしていないなら、リリースが遅すぎだ」。さらにもう1つ、「スタートアップの立ち上げというのは、崖から身を投げて落下している最中に飛行機を作るということだ」。実際にリードは、スピードを最も重要な意思決定要因とするための工夫を取り入れており、意思決定そのもののスピードを上げる手法も実践している。

 いくつかの選択肢がある場合にリードはしばしば、手元にある情報に基づき、直感的に仮の決定を下す。そのうえで、「仮の決定に誤りがあると証明するには、他にどんな情報が必要か」を考え、それらを集める。多くの人々は通常、情報が限られている場合、より多くの情報を集めるまで(危険を承知のうえで)判断を先延ばしにする。それには予想以上に長い時間がかかり、その間に世界は様変わりしてしまうのだ。

 判断を急げば、拙速によるミスもつきまとう。マネジャーが本気でスピードを重視するなら、その代償としてミスを許容するという意思を部下に伝えるべきだ。リードは私に対してそうしてくれた。さまざまな案件について、彼の判断を仰がず私が代わりに決断してよい、というのが我々の合意だった。そしてこう言われた。「スピード感を持って動くためなら、多少失敗しても構わない。1~2割のミスは許容範囲だ。私と異なる判断を下したとしても、君が迅速に動くうえでそれが必要だったのなら問題ない」。この1~2割という数字を基に意思決定を下せることで、私は力づけられ大きな自由を得ることができたのだ。

 たしかに、スタートアップにおいてスピードは極めて重要だ。しかし大企業の場合は事情が異なる。リードはこうも言った。「リンクトインのような大企業にとって肝心なのは、スピードが決定的に重要となる戦略を追求“しない”こと。大企業がスピードのみで競う戦略を取れば、必ず負ける。むしろ、時間をかけることが強みになりえる戦略を考え出す必要がある」

 リードが信奉する第2の原則は「シンプルであること」だ。シンプルさはスピードをもたらす。

 複雑なことを単純化するということは、複雑性を無視するという意味ではない。リードは繊細な思考をする人間であり、物事の詳細や副次的効果、例外などにも目を向けることをいとわない。だが、さまざまな意見が飛び交う意思決定のプロセス(特にグループでの意思決定の場面)では、リーダーは選択肢をふるいにかけてシンプルにまとめる必要がある。複雑性に対処することも重要だが、誰もが理解して行動に移せるように、意思決定をシンプルに示さなければならない。

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