終身雇用はこれからも続くのでしょうか

対談:君島朋子(グロービス)×篠田真貴子(東京糸井事務所)

1

長らく日本企業で当たり前とされてきた終身雇用は、今後も続くか。リンクトインの創業者であるリード・ホフマンらの著書『ALLIANCEアライアンス』では、終身雇用に変わる新しい雇用形態を提唱している。同書の監訳者である篠田真貴子氏と、グロービスでファカルティ本部長を務める君島朋子氏に終身雇用をテーマに対談していただいた(構成・新田匡央、写真・赤木真二)。

 

終身雇用から脱することができない日本企業

篠田:かつての日本企業は、終身雇用という形で社員との忠誠関係を結び、長期的な投資が実現できていました。でも、現在は終身雇用が通用しない環境に変わっています。にもかかわらず、新しい環境に応じた変革ができていない会社が多い。そうしたなか、終身雇用に変わる、新しい雇用形態を提案しているのが、この『ALLIANCEアライアンス』という本です。アライアンスでは、企業と人が信頼で結ばれる関係を目指します。まずは、本書をお読みになった印象についてから聞かせていただけますか。

君島 朋子(きみじま・ともこ)
グロービス ファカルティ本部長。
国際基督教大学教養学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻修士課程修了。マッキンゼーを経てグロービスへ。現・グロービス経営大学院のプログラム開発・大学院の設立を担当。現在はファカルティ本部長の傍ら、教員として思考領域・人材マネジメントの科目を担当。人材マネジメント・組織行動研究グループのリーダーとして、主に日本企業の人的資源管理と女性労働についての研究に携わる。

君島:数ヶ月前、いまさらですがダニエル・ピンクの『フリーエージェント社会の到来』を読んだんですね。読んで頭に浮かんだのは「いいことを言っているし、言っていることはよくわかるんだけど、ここに書かれている働き方をいきなり日本に持ち込んでも、ちょっと難しいよね」という印象でした。でも、この『ALLIANCEアライアンス』を読むと、すごく上手な解決策を出してくれたなと思いましたね。

 女性の働き方についても、7年ほど前に読んだロッテ・ベイリンの『キャリア・イノベーション』やSylvia Ann Hewlett の”Off-Ramps and On-Ramps: Keeping Talented Women on the Road to Success”に会社と個人の関係を改めなければならないことが書かれていました。その通りだと思いつつも、具体的な解が提示されていないもどかしさを感じた覚えがあります。その意味でも、ひとつの解を得られたという印象ですね。

篠田:そう言っていただけると嬉しいですね。ふと思ったのですが、君島さんが本を読んだ7年前でも、日本企業はまだ終身雇用が一般的であるという認識だったんですか。

君島:年代によって少し考え方にバラつきがあったような気がしますが、それでも経営者から社員まで、終身雇用を規範としていたと思いますよ。いまでは、日本企業でも早期退職などが行われていますが、それにしてもかなり手厚い条件を提示しています。ある大企業の人事部の方にお聞きしたのですが、早期退職させる社員の再就職先を会社が探し、再就職先の給料と現在の給料との差額を定年まで払ってあげるというのです。これは、終身雇用という暗黙の約束をしたけれど、それが守れなかったので罪滅ぼしをしているようにしか見えません。終身雇用という発想は、今でも脈々と流れていると思いますよ。

篠田:大企業の経営者は、終身雇用の約束を守りたいと思っているんですか。

君島:それはどうでしょうか。約束を翻せないだけかもしれないし、新しい形を示せないから仕方なく終身雇用を続けているだけかもしれません。

 一方で、グロービスに個人で学びに来てくださるような人は、終身雇用から一歩抜け出た考え方をしている方も多いと思います。

次のページ  アライアンスは企業と働く人の長期的な信頼関係を構築する手段»
1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking