「未来を予測するスキル」は訓練で高められる

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これまで多くの論考では、「人間は未来をうまく予測できない」とされてきた。しかし新たな研究によれば、人知による予測は無駄な行為ではなく、1つのスキルとして訓練・向上が見込めるという。それを可能にする方法とは?

 

「予測は難しい。特に未来については」と昔からよく言われる。長年にわたり、社会科学の分野でもそのことが認められてきた。専門家と言われる人々でさえ予測に失敗することが、多くの研究で示されている。2007年のHBR論文「予測の技術」は、予言・予想(未来の確実性を論じること)と、予測(可能性の正体をつかむこと)はまったく別のものであるとしている。つまり、未来を見通すことはかように難しいと考えられてきた。

 ところが新たな研究によって、この状況が変わりつつある。

 予測について以前よりもはるかに多くのことが明らかになってきたのだ。たとえば、予測に長けた人とそうでない人がいる。そして予測能力はある程度は学習可能であり、訓練によって誰もがその技術を磨ける。これは企業にとって朗報だ――あらゆる事柄を予測する必要があるのだから。

 予測に関する研究で最もよく知られているのは、ペンシルベニア大学のフィリップ・テトロックによるものだ。2006年の名著Expert Political Judgmentは重要な背景知識を提供してくれる。彼は研究の中で、識者や外交の専門家たちに地政学的な出来事を予測してもらった(ソ連は1993年までに崩壊するか、など)。その結果を総合的に分析したところ、「専門家」は「あてずっぽうなチンパンジー」に勝るところがなく、比較的簡単な統計的アルゴリズムよりも一貫して成績が悪かった。これはリベラル派であれ保守派であれ同様で、肩書きや資格にかかわらず共通していた。

 しかしこの時、テトロックは予測に役立つかもしれない1つの思考スタイルを発見した。複数の見解を比較検討したうえで予測する傾向にある人は、1つの確固たる考えだけを基に予測する人よりも正解率が高かったのだ。テトロックは哲学者アイザイア・バーリンの表現を借用し、前者をキツネ、後者をハリネズミと呼び、次のように説明している。

「知的志向の強いハリネズミは、1つの確固たる原則を信じている。論理は単純化すべきであるという大義名分の下に、その原則を他の新たな出来事にも適用しようとする。一方、より折衷主義的なキツネは多くの小さな事象を把握している。そして世界の急速な変化に対応すべく、状況に合った即興的な解決策を生み出そうとする」

 前掲書の刊行以来、テトロックと彼の同僚は地政学的な予測を競う大会を定期的に実施し(私も参加したことがある)、予測の精度を向上させる要因の発見に努めてきた。そしてバーバラ・メラーズを含む同僚数人と、最近の半年間で3本の新たな論文を発表した。その内容は、743人の参加者(最低でも学士号の保持者)による、199の世界の出来事に関する計15万件もの予測を分析したものだ。1本目の論文は予測精度の高い「スーパー予測者」に焦点を絞ったもので(英語論文)、2本目は全グループを対象にしたもの、3本目はこの大会を研究手段とする利点についての論証だ。

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