「自分らしさ」に潜むパラドックス

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米国を中心に、「オーセンティシティ」、つまり「自分らしさ」を表現することがリーダーシップの要件になっている。しかし誰もが一様にこれを追求すれば、逆に同質化にもつながる。リーダーシップと組織論の専門家ハーミニア・イバーラが、1つの方法論に拘泥することを戒める。

 

 100億ドル超の売上げを誇る中国企業、小米科技(シャオミ)のCEO雷軍(レイ・ジュン)は、外観・機能ともにアップルと非常によく似た製品(スマートフォンが好例)の製造でマスコミを賑わせている。だが両者の対比は製品にとどまらない。メディアはしばしば、雷軍のリーダーシップのスタイルをモノマネだと報じる。以下は、ニュースサイトのビジネスインサイダーからの引用だ――「雷軍は、スティーブ・ジョブズとまったく同じ黒いシャツとジーンズを身につけて大スクリーンの前に立ち、優れた構成のプレゼンテーションで製品を誇示することで、聴衆を高揚させる」

 自分らしさを貫く「オーセンティック・リーダーシップ」が声高に叫ばれるこの時代、オリジナリティがかつてないほど重視され、ロールモデルを模倣することは追従どころか詐欺的行為と見られるようになった。一方で、こうも言える。自分らしさを貫くこと自体が1つのパフォーマンスとなり、右に倣えの行為となっているのだ。

 例として、北米の上級幹部たちによるスピーチの典型について考えてみよう(最近では欧州でも同様だ)。近年では個人的な話が多く盛り込まれ、かつ綿密に構成されるようになった。冒頭ではたいてい自身のエピソードが語られる。幹部としてのあり方を試された困難や、リーダーシップの信条の元となった試練などが模範的な例だ。そこから「私が学んだこと」へと続き、自分らしくあることの大切さが述べられる。ユーモアと自嘲を交えながら話すのが定石だ。プレゼン全体のトーンは形式張らず自然体だが、内容は細部まで綿密に練られている。

 TEDトークやユーチューブの動画であふれかえる今日、こうした「アイデンティティの誇示」は、野心ある上級幹部がさらなる成功を遂げるうえで必須のスキルとされている。ニューヨークタイムズ紙の言葉を借りれば、志望企業や投資家や従業員に自分を気に入ってもらうためには「説得力があり、記憶に残り、笑えて、かつスマートであることが求められる。そして人を引き付ける力も」。また、際立ってオリジナルであることも必要だ。さもなければ雷軍のようにこき下ろされることになる。

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