豊富なケースから、認識力の限界が広がる
――書評『ハーバード流「気づく」技術』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する本連載。9回目は、ハーバード・ビジネス・スクール教授で行動心理学の権威であるマックス H. ベイザーマンの『ハーバード流「気づく」技術』を取り上げる。

「見ていたはずのものに気づけなかった」経験

 何か問題が起こった後に「そういえばあんなことがあった」とトラブルの元になるような出来事を思い出すことはないだろうか。人間には誰しも認識力の限界があり、こうした見落としをしがちなのだが、目の前にある重要な情報に正しく目を留めるにはどうすればよいのだろうか。本書『ハーバード流「気づく」技術』は、それを教えてくれる1冊である。

 本書の執筆のきっかけは、著者ベイザーマン自身の2つの経験にあるという。まず1つは、ある心理学者が作成した映像の罠に気づかなかったことだ。この映像には、バスケットボールのパス回しをしている男性3人組が2組(それぞれ白シャツと黒シャツを着ている)登場する。2重焼き付けになっているので少し見えにくいが、「白シャツ組のパスの回数を数えよ」という課題が出された。これには正しく答えられたものの、数えるのに夢中になって「傘をさした女性が通り過ぎていく」姿が映り込んでいたのは見落とした。ベイザーマンは行動心理学の権威で、認知バイアスや見落としについては熟知しているはずなのに、この映像の罠には気づかなかったのだ。そして、もう1つは、ある講座でともに仕事をした外交官たちが、自分や一般のエグゼクティブよりもはるかに視野が広く、自由な観点から発想するのを目の当たりにしたことであった。

 ベイザーマンは、これらの経験から、目の前のデータ分析は得意でも本来の目的達成のためには必要かもしれない追加情報を得るのは苦手、という自分の弱みを知るとともに、外交官たちのような「普通よりも広い範囲まで意識する術」――すなわち「気づく」技術は、的確な判断と行動が求められるリーダーにとって必要なスキルであると思い至った。しかもこのスキルは誰にでも磨くことが可能である、と。

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