天才になろうとする人間から、
天才をつくる人間に変わる
――書評『メンバーの才能を開花させる技法』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する新連載。第8回は、元オラクル大学バイスプレジデントのリズ・ワイズマンと、コンサルタントであり『エッセンシャル思考』の著者であるグレッグ・マキューンによる『メンバーの才能を開花させる技法』を紹介する。

消耗型リーダーから増幅型リーダーへ

 強烈なリーダーシップを発揮して、世の中の常識を覆したカリスマ経営者が注目を浴びる機会は多い。彼らは、何もないところから事業を興し、まったく新しい市場をつくり出し、革新的な製品・サービスを世に送り出す。そのなかの一握りは「天才」と称されることもあり、50年、100年と後世に名を残す人物である。

 だが、歴史を振り返ると、そんなカリスマ経営者の引退後に、急速に失速する企業もある。彼らは、自分の創造力と実行力が突出していると自覚しているため、あらゆる判断をみずから下すようになる。その結果、信頼して仕事を任せてもらいたい優秀な人材は徐々に離れていき、残っているのは判断力を失ったフォロワーばかりという悲劇が生まれるのだ。

 本書では、みずからが天才になろうとするのではなく、天才をつくり出すことで大きな成果を上げるリーダーに着目した。自分のやり方を強引に押し付けて部下を疲弊させる者を「消耗型リーダー」、部下を信頼して能力を最大限に発揮させる者を「増幅型リーダー」と定義し、両者が習慣化している5つの違いについて、豊富な事例を交えながら分析している。

 筆者は、消耗型リーダーは「たし算の論理」で動き、増幅型リーダーは「かけ算の論理」で動くと説く。前者は、「①社員は働きすぎている、②いちばん優秀な社員は限界にきている、③したがって、さらに大きな仕事をやり抜くには、もっと頭数が必要だ」という論理で動く。それに対して後者は、「①組織の人材のほとんどは十分に活用されていない、②正しいリーダーシップがあれば、すべての能力が活用される、③したがって、知性と能力は投資を増やさなくても増幅できる」と考える。

 言うのは簡単だが、実現するのは難しいという声もあるかもしれない。だが、本書では増幅型リーダーのノウハウが詳細に記されており、理論と実践が両立してのは大きな特徴だ。また最終章では、消耗型リーダーが増幅型リーダーに変わる方法も紹介されているため、読み終えたらすぐにでも使える、まさに“技法”が詰まった1冊である。

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