ポーター的CSVの限界
日本的経営に基づくCSV戦略の勝機

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本連載は、グローバリゼーション3.0の時代を生き抜くためにどう思考し、行動すればいいか、そして、日本企業が世界で勝つためにどのように戦略を再構築すればよいかを解説してきた。最終回となる今回は、日本企業はいま、具体的に何をすればよいかを考えてみたい。

グローバルスタンダードで
成功した企業はない

 グローバリゼーション3.0に進むための具体策というと、グローバルスタンダードのコーポレートガバナンスや、強いリーダーシップを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし私は、両方とも必要ないと思っています。

 事実、教科書通りのグローバルスタンダードに則った経営で、大成功を収めた企業はありません。逆に、図抜けた業績を上げている企業の多くは、自社なりの基準を設けています。たとえばグーグルは、議決権のない株式などを発行して、上場企業であるにもかかわらず一部の経営陣が支配権を持ち続けています。

 それでも株主になりたいという投資家は後を絶ちませんし、2004年の上場以来、グーグルの株価の伸びはナスダックの平均を上回っています。つまり、多くの一般株主は経営陣を信頼して任せることで、長期的には高いリターンを得ているということになります。

 日本企業も従来は、こうした一種の信頼関係を株主との間で築きながら成長を遂げてきました。しかし最近は、アクティビスト(もの言う株主)の要求に応えるために、安易なROE向上策に走るところも少なくありません。分子となる利益を上積みするのは大変なので、自社株買いや高配当などの株主還元で分母の方を減らす動きです。

 長期志向の投資家は、こうした儲ける努力の放棄が真の企業価値向上につながらないことを理解しています。表層的なコーポレートガバナンスのグローバル化がもたらした弊害といえるでしょう。

 もう1つ、この連載の第1回でも述べたように、カリスマ型のリーダーもグローバル成長には不要です。なぜならば、どれほど卓越した経営力を持つリーダーでも間違いは犯すし、1人の力で1のものを100にすることはできないからです。求められるのはみんなを動機づけて1つの方向に導く力であり、日本の強い会社にはこういうエンパワーメント型のリーダーがたくさんいます。

 グローバルスタンダードの罠に陥って、日本の経営のよさを見失うことだけは避けなければなりません。

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