フルーガル・イノベーション:
最少の資源で最大のインパクトを生む

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「フルーガル(質素、倹約的)・イノベーション」とは、最少の資源とコストで、最大の価値を機敏に生むイノベーションを意味する。本記事ではその5つの要諦を挙げ、一部の先駆的な経営者たちによる実践例を示す。

 

 フルーガル(質素、倹約的)・イノベーションとは、単なる戦略ではない。リソースの制約を不利ではなくチャンスと見なし、効率よりも機敏さを優先するという新しい考え方である。フルーガルな組織が目指すのは、技術的に高度な製品で顧客を喜ばせることではない。最小のコストで最大の価値を提供できる、優れたソリューションを生み出すことだ。

 我々の新刊Frugal Innovation: How to do more with less では、他社に先駆けてフルーガル・イノベーションに取り組む50社あまりの欧米企業のリーダーについて調査している。これらの先駆者たちは、自社のビジネスモデル(言わばハードウェア)を根本的に変えるだけでなく、従業員(つまりソフトウェア)のメンタルモデルをも変革している。倹約を組織のDNAに刻み込むためだ。自社で倹約の文化を育みたいと考えるCEOに向け、我々が得た5つの貴重な教訓を示したい。

教訓①:循環的なバリューネットワークを築く

 現在の企業のほとんどは、直線的なバリューチェーンを展開している。製品はその中で、設計・製造・販売・消費され、最終的には廃棄物となる。この直線的な経済モデルは無駄が多くコスト高で、環境的に持続可能ではない。CEOはリソースの効率性を高めるべく、自社のバリューチェーンを「循環的」に展開できるように作り変えなければならない。つまり設計・製造・販売の各段階に、持続可能な手法を新たに取り入れる必要があるのだ。たとえば設計ではC2C(Cradle to Cradle:揺りかごから揺りかごまで)の完全循環型設計、製造・販売では産業共生などだ。このような循環型経済の手法によって、素材や部品、さらに廃棄物さえも持続的に再利用できる。

 その好例は、世界トップクラスの床材および運動場用床のメーカーであるタルケットだ。エコデザインの原則を採用する同社が製品に使うのは、迅速に再生できる素材(くるみの殻や松脂、亜麻仁油、ジュート繊維、コルクなど)、そして消費前・後にリサイクルされたプラスチック素材のみである。CEOのミシェル・ジャンヌッツィの目標は、2020年までにタルケットを循環型の企業にして製品の大部分にC2C認証を得ることだ。それまでに、使用する素材の75%を再生可能またはリサイクル由来とし、ごみ処理場行きの産業廃棄物をなくす意向である。

 ヨーロッパでホームセンターを展開する大手小売企業、キングフィッシャーの例もある。CEOのイアン・チェシャー(本記事執筆当時)が推進する「クローズドループ」の製品とは、再生可能またはリサイクル素材で作られ、製造および使用の段階で再生可能エネルギーしか消費しない製品を指す。すなわち、製品が古くなったり壊れたりした場合、その部品や素材を新製品に使い回せるのだ。チェシャーの目標は2020年までに1000品目を持続可能な製品とし、最終的には4万品目すべてをクローズドループにしたいと考えている。

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