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IoTの源流:巨大企業GEはいかに
インダストリアル・インターネットを立ち上げたか

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 早く失敗して学ぶために実験を繰り返す、というシリコンバレーのソフトウェア業界の価値観は、既存のGEの文化には馴染みにくい。成功企業は既存事業を守りたがり、過去にうまくいったやり方を踏襲するものだ。長年の間に染みついた「工業的」な思考様式によって、オペレーション管理や安全管理を重視するあまり「安全ライン」から踏み出せない。GEのリーン・シックスシグマによるプロセス合理化は、製品開発において市場投入の前に完璧なものをつくることを重視する。ところが、これはソフトウェア開発やシリコンバレーにおける「やってみて、ダメだったら引っ込めればいい」という思考とは大きく異なる。仮説を立て、試し、そこから学ぶ――これを実践するためには、信念の追求、リスクテイク、失敗の可能性という3つを織り込んだアプローチが求められるのだ。

 社内での抵抗を克服するために、ルーとそのチームは、変化を素早く受け入れる事業部と最初に組んだ。そして急激な変革を目の当たりにした他の事業部は、乗り遅れまいと我先にソフトウェアセンターと協力し始めた。ある種の同調圧力によって、全社的なドミノ効果が起きたのだ。アヌンツィアータはこう語る。

「抵抗や疑念は少しはありましたが、やがてすぐに払拭され、組織のあらゆるレベルで新しい価値として受け入れられました。サンラモンには、GE以外の場所で経験を積み、スタートアップらしいくだけたコミュニケーションを取る人たちを大勢集めました。2つの異なる文化がうまく折り合った要因として、まずCEOジェフ・イメルトの強いコミットメントがあります。次に、サンラモンの社員の協力的な態度が挙げられます。彼らは新しい技術を持ち込んで事業を推し進める一方で、他者の話にも耳を傾けたのです。3つめの成功要因は、優先順位を正しく決められたことでしょう。特に、GEの規模を活かしてイノベーションを拡張するという点で、一丸となって機会を追求できています」

 グーグルマップによるナビゲーションやUberのタクシー手配のようなソフトウェア技術は、私たちの日常生活に革命をもたらすだけでなく、工業分野をも揺るがしている。機械は日々スマート化の一途をたどっている。工業系の企業は自社のハードウェアの有効性を保つために、ソフトウェアとデータに関する組織能力を迅速に高めなければ後れを取るのだ。社内スタートアップによって短期間で実現する方法を、巨大企業GEが示している。そのやり方に倣えば、自社の既存のルールを多少は破ることになるかもしれない。しかし生き残って成長するために、その代償を払うだけの価値は間違いなくある。


HBR.ORG原文:Building a Software Start-Up Inside GE January 29, 2015

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ブラッド・パワー(Brad Power)
FCBパートナーズのパートナー。プロセス・イノベーションと事業変革の分野で30年にわたり研究とコンサルティングを行っている。

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