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ノードストロームのデジタル戦略は
なぜ成功したのか

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米高級デパートのノードストロームは、オムニチャネルをはじめデジタル戦略に秀でる企業として知られる。同社の過去10年の取り組みを概観し、その成功要因を考える。カギは各技術の統合にあるようだ。

 

 我々が所属するマサチューセッツ工科大学の情報システム研究センター(CISR)は、最近あるアンケート調査を実施した。そこでは全回答者の42%が、「ソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウド、IoT(総称してSMACIT)の技術によって競争優位を獲得するつもりだ」と答えている。

 しかし、それは無理であろう。SMACIT技術の最大の特徴は、そのアクセス可能性にある。顧客や従業員、パートナー企業や競合他社を含め、誰もがSMACITにアクセスできるので、そのどれか1つによって競争優位を生み出すことは至難の業なのだ。とはいえSMACIT技術を無視していいわけではない。ほとんどの企業にとって、これらは業界での優位をもたらすのではなく、必要最低条件の見直しを迫るものである。

 ごくわずかな企業のみが、今後SMACIT技術によって競争優位を獲得する。SMACITの各技術に個別に取り組むのではなく、いかに全技術をうまく統合して独自の目的を達成するかを考える企業が優位に立つだろう。ここでいう「独自の目的」とは、「株主価値を生み出す」といった類の広義で単純なものではない。もっと現実的なもの、つまり技術投資の方針を決定づける戦略的焦点を意味する。

 アメリカ最大の高級デパートチェーン、ノードストロームを例に取ろう。同社が100年近くにわたって目標としてきたのは、顧客および従業員へのエンパワーメントによって、素晴らしい顧客体験を提供することだ。そして1990年代後半には、技術への投資によって従業員にさらなる力を与える機会を探り始めていた(同社の従業員エンパワーメントはすでに有名ではあったが)。その成果にはオンラインストアNordstrom.comや継続棚卸システムなどがあり、2002年には一貫性のあるマルチチャネル体験を提供できるようになっていた。

 その後2004年から2014年にかけて、ノードストロームは相次ぐ膨大な技術投資を進めたが、いずれも「素晴らしい顧客体験を提供する」という目標に真っ向から取り組むものだった。最初の成果は、「パーソナルブック」のソフトウェアと連動した新しいPOSシステムで、販売員は個々の顧客のリクエストやニーズの履歴をオンラインで検索できる。他にも社内で技術革新に取り組む「イノベーション・ラボ」の立ち上げ、モバイルアプリの開発、クチコミの促進とモバイル精算のためのソーシャルアプリの導入、販売員によるテキストメッセージ発信を可能にする仕組みの構築、さらにはオンラインで個々の男性客に服のコーディネートと買い物支援を提供する企業、トランク・クラブの買収もあった。

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