システム思考はものを見る
レンズのひとつである

システム思考対談:枝廣淳子×篠田真貴子【後編】

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『世界はシステムで動く』の訳者・枝廣淳子さんと東京糸井重里事務所CFOの篠田真貴子さんによる対談の最終回。人間関係から人生の生き方まで、メンタルモデルの重要性を語る。(構成:加藤年男、写真:引地信彦)

 

環境問題への関心の原点は、子どもの頃の田舎での生活

篠田:ところで、枝廣さんはどうしてドーナツ屋さん見ても(前編参照)システム思考で考えるところまでになられたんですか。

枝廣:昔は私も直線的な思考をしていました。ただ、小さい頃、住所に「大字(おおあざ)」がつくような田舎に住んでいまして、そのときに自然の循環を感じたんですね。そこの子供たちはそれぞれ山のなかに自分だけの秘密の場所をもっていて、私の秘密の場所は3月になるとふきのとうが出ました。そのとき、子供心に感じたのは、毎年この時期になると出るという自然の確かさでした。それがいま、環境問題に取り組んでいる基盤になっています。

 もう一つは、ふきのとうの少しあとにタラの芽が出るんです。タラの木というのはトゲが一杯ついているんですよ。持って帰るとお母さんが喜ぶから、先端につくタラの芽を摘みたいんだけど、子供にはなかなか大変で、あるとき枝を折って取ったんですね。すると翌年はタラの芽が出てこなかった……。

篠田:なるほど。

枝廣:そのように、自分が自然に対して何かをやったときのフィードバックの実感を、自然の中で遊んでいるうちに得てきたことが一つあります。

 私がシステム思考に最初に出会ったのは2002年に、本書を書かれたドネラさんたちがつくっていたシステム思考家のネットワークの合宿に誘ってもらい、新しく参加した人のためにシステム思考のワークショップを体験したときでした。そのときに、あっこれだ! と思ったんです。

篠田:ほぉー。

枝廣:この考え方が自分にも日本にも必要だと思って、勉強して日本に持ち帰ろうとしました。だからたぶん、自分に足りない、日本に足りないものがここにあるということを感じるような土台があったのでしょう。直線的にAだからB、BだからCと言っているだけじゃダメだよね、みたいな気持ちがね。

篠田:直線的だと解消しない問題が一杯あるということを、それ以前のご経験のなかで感じていらした。

枝廣:そうです。私はもとは心理学を専攻していました。なぜ心理学を専攻したかというと高校時代に自分の心の動きにすごく興味があって、今日学校に行ってこういうことがあって、私はこういう気持ちになって、それでこうしたら誰々にこう言われて、ますますこんな気持ちになったというようなことを文章で書いていたのです。人間の心理ってグルグル回って全然直線的ではないでしょう。そんなことを高校の頃から思っていたからかもしれませんね。

篠田:高校生の女子にありがちな、泣いているうちに余計に悲しくなるような心理ですね。

枝廣:いま日本にこういう考え方が必要だと思うのは、直線的に、効率を最優先する考え方も大事だけども、それがすべてになったらすごく大変だと思うからです。効率的に子育てするとか、効率的に恋愛するってありえないでしょ。それなのに直線的な効率を求められる世の中になっちゃったから、心がつらくなる人が増えている。

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