デジタルの世界観に付いていけない日本企業

マーケティングの可能性を高めるデジタル

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日本企業のマーケティングが進化を止めている。彼らが相手にする消費者にはデジタルが当たり前のように浸透している一方、企業はそれを使いこなすことができず、コミュニケーションが成り立たないのである。本来、デジタルはマーケティング課題を解決する可能性を高めるものである。今、マーケティングの原点に立ち返り、デジタルを活用したブレイクスルーが求められている。

日本の経営者たちは、なぜ、
「デジタルの世界観」を理解できないのか

 地球上のインターネットユーザー人口が2020年には50億になる(*1)といわれるように、デジタルを日々の生活に取り入れる消費者は今も刻々と増えている。

岡崎 恒
デロイト デジタル
エグゼクティブ ブランド
ストラテジスト

商用のインターネットが先進国に普及し、アマゾンがビジネスを開始したのは1990年代半ばであり、以降、生まれた瞬間からデジタル環境に身を置いている 「デジタルネイティブ」が出現している。彼らは、PC、スマートフォン、タブレットなどあらゆるデジタルデバイスを自らの身体の一部のごとく使いこなし、 デジタルの世界で深く広いつながりを構築している。

 このようなデジタルの広がりは、デジタルデバイスやインターネット通信などの事業展開、IoTやアナリティクスの活用による製品・サービスの開発、製造、販売、さらにはバックオフィス業務も含め、あらゆる企業活動に大きな変化を与えている。なかでも大きな影響を受けているのが、企業が消費者と直接的に会話するマーケティング活動だ。

 デジタルの世界に身を置き、その利便性や有効性を知り尽くしている消費者は、デジタルを介して、より人間的で、パーソナルで、自分を一人の人格として認めてくれるコミュニケーションを求め始めている。デジタルの無機的で閉ざされた世界だけでは物足りず、オープンで血の通った人間臭い会話を求めているのであり、企業という主体との関わりにおいても人間的な側面を感じたいのである。

 しかしながら、多くの日本企業のマーケティングは、このようなレベルにはほど遠い。トップマネジメントからの我々への問いかけは、いまだ「デジタルをどのように捉え、活用したらよいか」であり、インターネット黎明期に向けられた素朴な質問と何ら変わらない。デジタルの圧倒的な進化やデジタルネイティブの台頭を考えれば、日本企業のマーケティング領域におけるデジタル環境への適応の遅さは危機的といえる状況にある。

日本企業はなぜ
マーケティングに苦慮しているのか

 デジタルの活用以前の問題として、そもそも日本企業はマーケティングに苦慮している。きめ細やかな気遣いや空気を察する感受性など、「日本的」と称されるものは、マーケティングには有利に働きそうにもかかわらず、である。

 マーケティングの歴史は1900年代初頭にも遡るといわれ(*2)、T.レビットやP.コトラーを筆頭にその理論は拡張されてきた。数ある理論のなかでも、消費者が求める企業との関わりを考えるにあたっては、P. F.ドラッカーとD.A.アーカーの指摘が重要である。


*1 Salim Ismail ”Exponential Organizations”, Diversion Books
*2 1905年、ペンシルベニア大学で「The Marketing of Product」の講座が設置された。

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