「ピラミッド探索」で異質の知を獲得する

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イノベーションのヒントを異業種から探るうえで、1つの方法となるのが「ピラミッド探索」だ。人づてに専門家をたどっていくという単純な原理だが、仕組み化できれば人脈とイノベーションをともに強化する役に立つかもしれない。

 

 企業のR&D担当マネジャーたちは、ある認識を高めている。自社の業界とは異なるが類似性のある分野にいる人々の専門知識を活用すれば、イノベーションの課題に対して極めて斬新なソリューションが得られるということだ(前回の記事を参照)。ただし、そのような専門家を見つけ出すこと自体が難題である。適切な専門家とは誰で、いったいどこにいるのだろうか。それを探る道のりは遠く思えて、途方に暮れることもあるだろう。

 たとえば、あなたがトラック搭載型フォークリフトを製造する会社のマネジャーだとしよう。最善の努力にもかかわらず、フォークリフトの積み込みと積み降ろしをより安全に、効率よく、簡単に行う方法を考え出せないでいる。他の業界を当たれば画期的なソリューションに出くわすかもしれないと感じているが、自分の専門領域と共通性がある分野を見つけるには、そもそもどこから始めればいいのだろう。

 1つ効果的なやり方がある。「ピラミッド探索」と呼ばれる方法だ。ここでいう「ピラミッド」とは、知識やテーマの「分野」を意味する。この探索は創造的な努力を要するが、一連のステップは極めて明快だ。自分の専門分野だけでなく、他のさまざまな分野に適用できる。

 ピラミッド探索を開発・研究したのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン・スクール・オブ・マネジメント教授のエリック・フォン・ヒッペルの研究グループだ(英語論文)。ただし、イノベーションの課題に対するソリューションを類似分野で見つける方法はこれだけではない。他にも、ハーバード・ビジネススクール准教授のカリム・ラカーニらが研究した「ブロードキャスト探索」がある(英語論文。クラウドソーシングの1手法)。ピラミッド探索は、遠くにある干し草の山から針を探し出すような場合には非常に有効だ。つまり、広大で曖昧な探索領域から、稀有な知識を見つけ出せるのだ。

 ブロードキャスト探索とは違い、ピラミッド探索はクラウドソーシングに伴う「クラウド(群衆)の構成」の制約を受けない。さらに、素早く臨機応変に学ぶことが可能になる。探索を進めながら、当初の問題を適宜変更・精緻化し、別の問いに設定し直すことさえできる。(これは「スノーボールサンプリング」と「スモールワールド実験」の知見に基づいているが、特にイノベーションのための探索に適している。)

 ピラミッド探索の概念を説明しよう。まず、問題に取り組んでいる分野で何らかの知識や関心を持っていそうな人を見つけ出す。その人物に、もっと知識を持っていそうな他の誰か、あるいはもっと知識のある人を知っていそうなのは誰かを尋ねる。そして名前が挙がった人物に連絡を取る。その分野(ピラミッド)の頂点、つまり最高水準の専門知識と情熱を持つ人物に出会うまで、このプロセスを繰り返す。

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