「ニーズ」と「シーズ」の融合ができれば、
オープン・イノベーションの成果は変わる

共創の時代は到来するか【第3回】

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オープン・イノベーションに取り組む企業の多くが抱える課題のなかに「革新的な製品ができない」というものがある。最終回ではこの課題を克服する一つの方策として「イノベーション対話促進プログラム」を取り上げ、新しいオープン・イノベーションの形を提示する。

イノベーション対話促進プログラムとは何か

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川上智子 (かわかみ・ともこ)
早稲田大学ビジネススクール教授。 ミノルタカメラ株式会社(現コニカミノルタ株式会社)を経て、関西大学教授、ワシントン大学ビジネススクール客員研究員・連携教授、ナンヤン理工大学アジア消費者インサイト研究所リサーチフェロー等を歴任。2015年4月より現職。Journal of Product Innovation Management編集委員。日本マーケティング学会理事,日本商業学会理事も務める。専門はマーケティング論、イノベーション論。

前回は、オープン・イノベーションの4つの類型のなかでも、マーケティング・インバウンド(MI)型オープン・イノベーションの事例を検討しつつ、3つの課題とその処方箋について述べた。3つの課題とは、

課題① 誰に何を聞けばいいのかわからない

課題② 革新的な製品ができない 

課題③ 継続や拡大が難しい

 であった。最終回の今回は、課題②に関連して、革新的なオープン・イノベーションを実現するための1つの方向性として、対話型オープン・イノベーションの事例であるイノベーション対話促進プログラムを紹介し、実践者としての経験も踏まえて考察したい。

 イノベーション対話促進プログラムは、文部科学省が平成25年度に実施し、30機関が採択された事業である。その目的は「大学等において多様な参加者の知見を活用したデザイン思考の対話型ワークショップ等を運営することなどにより、大学等発のイノベーションを創出する確率を高めることとそのプロセスの検証を行うこと」にある(注1)。

 国がこうした事業を推進しているのは、先端的な科学技術をもとに、画期的なイノベーションを創出する必要性が強く認識されているためである。従来の産学連携は、企業が提示した技術的課題に、大学側が研究成果や技術シーズを提供する形で行われ、一定の成果を挙げてきた。今後は、大学や企業の先にいるエンドユーザー(消費者)も巻き込んで、社会全体のニーズと技術シーズとをマッチングさせる必要がある。そのためには、今の社会から帰納的に掘り起こせるニーズにこだわらず、あるべき社会の将来像をデザインし、それを実現する方向性でイノベーションを創出する仕組みが求められている(注2)。いわば、産学連携のオープン・イノベーション化である。

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