専門性なきところに
イノベーションは起こらない

これからの日本企業に求められる人事・組織の考え方(2)

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企業の変革を求めるなら
人事のプロの育成は急務

 間接部門において、GEやP&Gなどのグローバル企業が実行したイノベーションの一例が、グローバルシェアードサービスセンターである。P&Gでの実践例を本シリーズの第4回で既述したが、これは大きなチャレンジだった。社員が数十万人という大企業では、間接部門で働く人たちも数万人に達する。その業務の相当部分を占める定型的なプロセスを、中国やインドなどのシェアードサービスセンターに移管するのである。

 各国現地法人、とりわけ先進国での雇用には大きな影響がある。痛みを伴うプロセスだが、先進的なグローバル企業はこれを成し遂げた。効率化がもたらしたベネフィットは、前向きな投資に振り向けられた。間接部門のメンテナンス業務はスリム化され、人事や財務などを担う社員たちはより戦略的な方向にシフトしている。

 国内雇用に与えるインパクトを懸念してのことだろう、日本では国境を越えたシェアードサービスセンターを導入する企業はほとんどない。経営者は目先の痛みを避けて、中長期的な成長(長い目で見れば雇用の拡大)を諦めているように見える。

 シェアードサービスセンターはややハードルが高いかもしれないが、そのほかにも、人事部門が取り組むべき課題は多い。一般的な日本企業を想定した場合、人事や組織運営の課題をキーワードとして列挙すると以下のようなものが並ぶ。

 終身雇用、年功序列、職能給、諸手当、社宅制度、内部育成、昇格制度、不透明なキャリアパス、総合職育成(たらい回し人事)、残業に依存した労働環境、男性優位、コンセンサス型意思決定、指揮命令型統制、次世代リーダーの育成などなど。これらのさまざまな観点で、日本企業は抜本的な変革を求められている。

 ただし、単にGEやP&Gを後追いするだけでは、永久に追いつけないだろう。人事・組織における世界的な潮流を学び咀嚼したうえで、日本企業としての強みを生かした新しい日本流のスタイルを構築する必要がある。

 世界のどこにも手本のない人事・組織モデルづくりには、長い時間がかかるにちがいない。また、ある程度の試行錯誤も覚悟する必要があるだろう。大きなチャレンジを成功に導くためには人事部門だけでなく、経営層のコミットメント、強力なリーダーシップは不可欠だ。

 以上のような変革に着手するうえで、注意すべきことがある。それは、組織は生き物だということ。その本質的な機能である免疫の働きによって、組織は異物を排除しようとする。

 人事・組織のさまざまな制度やルールは複雑に絡み合っている。一部の変更は他の部分にも影響を及ぼすので、取り換えやすいパーツから一つずつ刷新するといった変革アプローチをとりにくい。どのボタンを押せば何が動くかを知るためには、人事や組織という複雑な機構に対する深い理解が必要だ。それが専門性である。

 P&G在職中、私はおよそ30年にわたって人事部門で働いた。日本企業の人事部門はどうだろうか。たらい回し人事の結果、人事の専門家が育たないケースは非常に多い。経営者が本気で企業の姿を変えたいと思うなら、自らリーダーシップを発揮すること。同時に、人事のプロフェッショナル育成は急務である。

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