専門性なきところに
イノベーションは起こらない

これからの日本企業に求められる人事・組織の考え方(2)

2

古い仕組みはすでに機能不全
人事部門に変革の意志はあるか?

 では、日本企業の人事部門は自らを変えようとしているだろうか。

 私はよく、人事・組織関係のセミナーの講師を務めたり、小規模なワークショップで話したりする。聴衆や受講者の大半は人事部門で働く人たちだが、中でも目立つのは外資系企業の社員たちだ。世界的に有名な企業の日本法人で、人事を担当する人たちである。

 こうしたグローバル企業は以前から人事・組織変革に取り組んでおり、いまも熱心に新しい考え方を学ぼうとしている。一方、日本企業の人事部門からの参加者は多いとはいえない。

 本来なら、この分野で変革らしい変革にほとんど手を付けていない日本企業ほど、新しい知見を貪欲に求めてしかるべきだろう。しかし、経営者と同様、人事部門の危機意識も希薄だ。ただし、若手の課長クラス、それ以下の世代には希望を持っている。40代以下の世代は人事・組織変革の理論、海外の事例などを積極的に学ぼうとしているように見える。

 人事部門の旧世代の中には、「定年まで、いまの仕組みを維持したい」と考えている人も多いにちがいない。世界の趨勢に合わせて人事制度を変えるとなれば、イチから勉強し直さなければならない。新しい知識の量では、若い世代に圧倒されるかもしれない。旧世代ができるだけ長く現状を維持したいと思うのは、当然だろう。

 問題は、そのような古いスタイルがこれからも通用するかということだ。すでに機能不全を起こしているというのが私の見方であり、少なくとも、若手世代は同意してくれるのではないだろうか。

 日本企業において人事・組織における変革への機運が高まったとしても、ここで別の課題が浮き彫りになる。それは、変革のビジョンやシナリオを描き、それを実行する能力が人事部門にあるのかということだ。

 問われるのは、人事・組織という領域における専門性である。アマチュアばかりの集団、専門性のないところにイノベーションは起こらない。

 日本企業は研究開発や生産分野などの分野で数多くのイノベーションを実現してきた。それを可能にしたのは、長年にわたって特定のエリアで研鑽を積んだプロフェッショナルたちの存在である。

 一方、人事や財務といった間接部門ではどうだろうか。この十数年にわたって、日本発のイノベーションというものを聞いたことがない。専門家の不在が唯一の理由とはいえないにせよ、大きな要因の一つであることは確かだろう。

次のページ  GEやP&Gの後追いでは、永久に追いつけない»
Special Topics PR
Decision Maker 関連記事
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS