専門性なきところに
イノベーションは起こらない

これからの日本企業に求められる人事・組織の考え方(2)

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多くの産業分野において、日本企業の業績は海外のライバルに見劣りする。まずは、こうした現状を認識したうえで、さまざまな変革に着手する必要がある。その代表的な分野が人事・組織である。しかし、変革のビジョンやシナリオを描き、困難を乗り越えて実行に移せるだけの能力は十分とは言えない。人事部門における専門性の育成は急務である。

変革のスタートを切るには
まず「負け」の認識から

 一部の産業分野を除いて、世界という舞台で日本企業は負けている。もしくは、技術力や製品品質、財務的な余力などの観点ではグローバル競争への参加資格を十分に持ちながら、リスク回避型の意思決定の結果として、より大きな舞台で勝負しようとしない。国内市場の成長が見込めないにもかかわらず、である。まず、この現状認識からスタートする必要がある。

 産業分野ごとに、海外のライバルと比較してみれば一目瞭然だ。売り上げの成長率、利益率で勝っている企業は少数。欧米系が売上高営業利益率では軽々と二桁%をクリアしている業界で、日本企業はその半分、3分の1の水準にとどまっている。

 しかし、多くの経営者の認識は違うようだ。日本の経済メディアも、昨今は業績回復や株高ばかりを囃し立てている。世界で負けていても、国内で勝っていれば「勝ち組」企業と呼ばれたりする。

「負けている」または「勝ちに行こうとしない」現状に対して、経営者は本当にこのままでいいと思っているのだろうか。たとえば、ライバルが15%の営業利益率をキープしている一方で、自社は5%を出たり出なかったり。こうした状況が5年、10年続けばどうなるだろう。将来に思いを巡らすには、さほどの想像力は必要としないはずだ。

 グローバルで勝ちたいと思うのなら、さまざまな分野での変革を避けて通ることはできない。代表的な分野が人事と組織である。

 前回、デイビッド・ウルリッチの分類を用いて、人事の役割について述べた。人事制度の管理者、従業員の擁護者としての業務は今後とも重要だが、これからの人事部門は、こうしたメンテナンス業務だけにとどまっているわけにはいかない。ビジネスのパートナー、変革の擁護者としての機能を強化する必要がある。

 なぜ、人事部門は変わらなければならないのか――。グローバル化の進展やITの進歩などによって激変するビジネス環境に適応するためには、組織の再構築が不可欠だ。従業員に求められる資質や能力も変わってくる。こうした変革に向けた人事・組織戦略をリードすべきは経営者だが、人事部門の強力なサポートは必須である。

 人事部門が旧態依然のままでは、新しい人事・組織戦略を策定することもできないだろう。仮に外部コンサルタントなどの力を借りて立派な戦略が完成したとしても、それを実行することは不可能だ。

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