経営トップの「ごぼう抜き人事」が広がる理由

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経営トップのごぼう抜き人事がしばしば話題となる。ホンダや三井物産といった国内での最近の例のみならず、この「リープフロッグ」(飛び級昇進)は海外でも顕著になりつつあるという。その背景をBCGの専門家が分析する。

 

 企業の取締役会は昨今、新たなCEOの選定にあたり、最高責任者レベルではなく比較的経験の浅いリーダーを抜擢する傾向を見せている。

 長年にわたり優れた経営者の特質であった、知力、人格、バイタリティなどは変わらず重視されている。しかし現在さらに求められているのは、今日の予測不能な環境において重要なシグナルを読み取り、それに難なく対応できるCEOだ。これは候補者の経験不足を補って余りある能力だと取締役たちは考えている。既存の経営幹部らは往々にして、社内の問題にばかり目を向け、馴染み親しんでいる分野に投資したがり大胆なリスクは取らない。

 我々ボストン コンサルティング グループは、調査およびクライアントとの仕事を通して、この「トップ人事のリープフロッグ現象」(飛び級昇進)を観察してきた。私と同僚たちは数百に及ぶニュースリリースやウェブサイトに目を通し、リーダーシップの専門家多数に話を聞いたほか、S&P500企業とS&Pグローバル100企業における過去5年間のCEOの交代・継承を分析した。一連の調査から、この新たな傾向の特徴が見えてきた。

 CEOへの飛び級昇進が最も顕著な業界は、小売り、テクノロジー、メディア、電気通信などだ。どれも破壊的なビジネスモデルと新たな競争相手の影響をことさら受ける産業である。近年の例を挙げれば、ヤフーのマリッサ・メイヤー、グーグルのラリー・ペイジ、バーガーキングのダニエル・シュワルツ、マイクロソフトのサトヤ・ナデラ、ペットスマートのデイビッド・レンハート、ゲームストップのJ・ポール・レインズなどがいる。

 この種のCEOの多くは30代か40代で指名されているが、ここでの飛び級は若さよりも昇進の速さに特徴がある。ゼネラルモーターズのメアリー・バーラや、エトナのマーク・ベルトリーニは50代でCEOに就任したが、ともに自社の典型的な出世のスピードより速くトップになっている。

 いまや取締役会は、企業内の深くまで目を光らせ理想的な経営人材を探している。まったく新しいテクノロジーとデジタルメディアを歓迎する者。イノベーションの実績がある者。発展途上国、新興国、フロンティア市場を舞台に、多様な文化にまたがってリーダーシップを発揮できる、自信に満ちた地球市民。顧客層の変化を鋭敏に把握できる者。そしてアダプティブな(適応力の高い)リーダーの特長――並外れた好奇心、開かれた精神、行動する勇気など――を備えた者。

 これらは飛び級リーダーの特長の一部である。彼らは時流をとらえ、自社に眠っている能力を掘り出して活用できる見込みが高い。既得権や旧来の慣行を守りたい人々による手ごわい反発に直面することも多いだろう。だが自社の文化的規範を十分に理解しており、事業の継続性に影響しない範囲でそうした反発を無視できる。

 CEOを飛び級で指名する理由はさまざまであるが、総合的に判断すると、その背景には大きく2通りのシナリオがあると思われる。

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