時代を動かすのは、情熱と狂気である
テラ・マフィアで日本の産業を変える
――テラモーターズ・徳重徹

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起業といえばITベンチャーが主流とされる昨今、製造業を立ち上げて、世界を舞台に戦うテラモーターズ代表取締役社長の徳重徹氏。徳重氏はなぜ、否定的な声に耳を貸すことなく、自分の信じた道を歩き続けられるのか。2014年11月号「巻頭言」の「経営とは狂気の産物である」と関連して、徳重氏の熱い想いが語られる。前編はこちら
 

シリコンバレーでは
「クレイジー」が褒め言葉だった

――いま注目される起業家はインターネット関連が中心ですが、徳重さんが電動バイク事業を選択されたのはなぜでしょうか。

 私がそれを始めるまでには、時間がかかっています。他の仕事をやりながら、いろいろと考えていました。実は、シリコンバレーから帰ってくるとき、正確にはその途中で、妻の親類がやっていた中小企業を立て直したことがあります。個人保証が4億円、それなりに大変ではありました。そちらの目処がある程度立ち、もう1回ベンチャー企業の世界に戻ることを決めました。

徳重徹(とくしげ・とおる)
テラモーターズ 代表取締役社長
1970年生まれ。山口県出身。九州大学工学部卒。住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)にて商品企画・経営企画に従事。退社後、アメリカ、サンダーバード経営大学院にてMBA(経営学修士)を取得し、シリコンバレーにてコア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。2010年4月に電動バイクのベンチャー企業、テラモーターズを設立。設立2年で国内シェア・ナンバーワンを獲得し、リーディングカンパニーとなる。主な著書に『世界へ挑め!』(フォレスト出版)がある。

 自分自身のキーワードは当時から明確で、「日本の技術を世界に広げる」ということです。シリコンバレーにいる人たちは、最初から世界市場で考えています。日本が世界で戦う場合、そこには技術があります。日本が得意とする技術で世界と戦う、というキーワードはずっとありました。

 ロボットなのか、暗号技術なのか、それをどのように形にするのかはいろいろと探しました。3年くらい探すなかで、電動バイクを見つけたんです。起業はとてもエネルギーを使うので、思い入れがあることでないと続きません。私の場合は何に思い入れがあるかというと、グローバルとイノベーションです。調べてみると、いまやっている事業はそれに近い領域がありそうだなということがわかりました。

 ただ、これもいつも言っていますが「60%OKならGo」です。半年くらいは調べて、これはおもしろそうだし、可能性もあるとわかった。ただ、実際にやってみてもその通りにはいかないこともわかっています。やりながら軌道修正して、いまにたどり着きました。論理的なプロセスも必要ですが、調べながらクレイジーになったわけではなく、「こうあるべき」がとにかく先にあります。

――日本に対する強い想いを持たれたきっかけは何ですか。

 日本を好きか嫌いかでいえば、どちらかというと嫌いでした。決断力がない、建前主義、年功序列など、問題があるとわかっているのに変えられない状況がイヤだったのです。ただ、アメリカに行ったことがきっかけでその気持ちが少し変わりました。日本人ということで信頼されるし、尊敬もされている。それは強さではありませんが、良さではあります。

――強さではないけど、良さではある。強さとは現状を打破する突破力のようなものですか。

 ええ、ただまずは良さを見ようと思い、そこから日本のことを勉強しました。私は理系だったこともあり、歴史ほとんど勉強していませんでした。明治維新など歴史が大きく変わるところしか勉強していなかったのです。それが、33、34歳のときに、司馬遼太郎の『坂の上の雲』(文藝春秋)を読んで衝撃を受けました。

 戦争なので悪いことをしている面もありますが、プロジェクトとして見ると興味深い。新興国であった日本が、大国・ロシアに引き分け以上の成果を残したのです。やけっぱちな動きではなく、そこには綿密に練られた戦略があったことを知りました。

 かつ、座して死を待つのか、それとも行動して状況を変えるかと考えた時に、後者を選択する覚悟を持ったリーダーたちが各分野にいたんですよね。世界史の奇跡とも言われますが、日本人はそれをやった民族なんです。いまはダメかもしれませんが、根本はすごい。

——徳重さんは、吉田松陰の言葉もよく引用されますよね。それもアメリカに行ってから学ばれたことですか。

 はい、それもアメリカに行ってから知りました。アメリカに行った後に、日本を好きになる人は多いですよ。国のことはどうでもいいと考える無国籍タイプが半分と、日本を好きになるタイプが半分。私は好きになるほうでしたね。

 私は、地元の山口県もあまり好きではありませんでした。とても保守的です。でも、よくよく調べると坂本龍馬より山口出身の高杉晋作のほうがすごいと思うようになり、それで山口のことも好きになりました。さらに、彼の考え方は吉田松陰から来ていると知り、そこから松陰の本をいろいろ勉強しました。松陰は、情熱と狂気が時代を動かすと言っています。狂気を英語にするとクレイジー。本当にそう思います。

 シリコンバレーでおもしろかったのは、彼らはクレイジーと言われることに、褒められているという感覚を持っていることです。日本人もそれくらいの心境にならないといけない。リーダーだけではなく、チームとして、組織としてそう思えなければ新しいことはできません。だからこそ、単なるインテリにはイノベーションは起こせないと思います。もし新日本製鐵の永野さんがご存命だったら、いまの日本を見て激怒していると思いますよ。

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