クエーカー教徒に学ぶ、究極の「聞く技術」

1

従業員の声に耳を傾けることは、エンゲージメント(仕事への意欲、愛社精神)に直結するという調査結果や論説は多い。コミュニケーションにおいて傾聴よりも「即応」が重視される風潮のなか、クエーカー教徒が傾聴によって問題解決を促す「クリアネス委員会」は示唆に富む。

 

 聞く力は、ソフトスキルの最たるものと見なされることが多い。したがって、「強力な聞き手」というのは矛盾した言葉だと思われるかもしれない。しかし私は企業幹部たちと接するなかで、大切なことを聞き取ろうと真摯に耳を傾ければ、時に驚くべき効果があるということを教えられた。傾聴は従業員の意欲を高める最も重要な方法の1つなのだ。

 従業員エンゲージメントを高めることの難しさは、誰もが知っている。ギャラップの最近の調査によれば、全世界の従業員の63%は仕事に意欲を感じていない(英語記事)。それによる損失は全世界の総計でざっと5000億ドルに上るという(英語記事。意欲や愛社精神の欠如は、生産性の低下、窃盗、同僚への悪影響、欠勤、顧客の離反などを招きやすい)。ギャラップのチーフ・サイエンティストのジム・ハーターは、より前向きな点としてこう述べている。「当社の従業員エンゲージメントのデータベースで上位1割を占める上場企業は、競合他社と比べて1株当たり利益が147%高い」(英語記事)。

 調査が示すこれらの損失とチャンスは、次の疑問へとつながる――「短期間で多くの費用をかけずにエンゲージメントを高めるには、どうすればよいのか」。実際に効果がある数少ない要因の1つは、従業員が「この職場では自分の意見は重視されている」と思えることである。聞くこと――心から耳を傾けること――それが重要なのだ。

 多くの企業は、より多く何かを提供することで従業員の意欲を高めようという、誤った道を進んでしまう。それは基本的に、ノイズを増やすだけである。私はシリコンバレーで、経営陣が極端な特典を与える例を何度も見てきた。週7日・24時間の食事の提供、コンサート付きの派手な社外会議、スポーツ大会、フラダンスから『アメリカン・アイドル』まであらゆるテーマのクラブ活動、その他もろもろの奇想天外で仰々しいプログラム――。遊びには効果もあるとは思うが、悪くすれば完全な的外れになってしまう。そういう例を見ると、映画『ピノキオ』の「プレジャー・アイランド」を思い出す。操り人形がロバになりかけてしまう、あの遊びの島だ。

「ご馳走や見世物」で歓心を買える従業員もいるかもしれない。しかしこの種の特典によって、従業員の心をつかみ最大限の貢献を引き出せるとは私には思えない。結局それは、いまだに従業員を木製の操り人形のように扱っているということだ。そしてガイ・カワサキが言うところの「無能の連鎖(bozo explosion)」――企業が成功後につまらない組織へと劣化してしまう、お決まりの現象――を象徴している。さらにこのような小手先の特典は、従業員エンゲージメントの核としてギャラップが特定した12の項目(Q12)にも該当しない。

 他者との強い絆が生まれるのは、自分の話を聞かせる時ではなく、相手の話に傾聴する時である。だが今日では、傾聴を実践している企業幹部は非常に少ない。そのスキルが欠けているせいではなく(多くは実際に欠けてはいるが)、ソーシャルメディアやスマートフォン、そして即時のリアクションが求められる風潮の蔓延によって、傾聴のスキルが危機にさらされているからだ。会話の最中に、相手が突然スマホをチェックし始めたという経験は誰にでもあるはずだ。聞くという行為が廃れていく現状は、非常に嘆かわしい。なぜならこの知識時代における価値創造は、傾聴によって重要なことを探り当てる能力に大きく左右されるからだ。

1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking