小さき者たちの偉大な戦略に学ぶ
――書評『道端の経営学』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する新連載。第3回は、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院准教授のマイケル・マッツェオらによる『道端の経営学』を紹介する。

“バツイチトリオ”に経営の本質を学ぶ

 経営学を学び始めたとき、「ここで学んだ理論は実際のビジネスの現場で役に立つのだろうか」という疑問を抱く人は少なくないのではないか。本書はその問いに対する答えとして、「すべての戦略的課題の答えは『場合によりけり』」と説く。つまり、唯一無二の答えなど存在しないことを断言しているのだ。それも本書の冒頭で、である。

「言われなくてもわかっている」「身も蓋もない結論だ」と憤る人もいるだろう。しかし、そこで本を閉じてしまうのがもったいないと気づくまでに、それほどの時間はかからないはずだ。みずからを“バツイチトリオ”とちゃかす陽気なオジさまたちの旅は、単に好奇心を刺激してくれるだけでなく、それこそがビジネスの本質だと改めて実感せざるを得ないからである。

 本書で紹介される企業の規模は大きいものではなく、いまだ発展途上にあるともいえる。それでも、自社の競争優位を見極め、それを追求する姿に学ぶべき点は多い。ネットワーク効果で参入障壁を築く会計士専門の採用支援会社、ある特徴的サービスで差別化を実現したフィットネス・ジム、独自のブランド構築に成功した葬儀会社、成果主義を捨てた自動車整備会社……一つひとつから経営上の重要な教訓を得ることができる。

 登場する経営者に対して、スティーブ・ジョブズが持つカリスマ性や、ジェフ・ベゾスのような革新性、ジャック・ウェルチが発揮する強烈なリーダーシップを感じることはないだろう。失礼と承知のうえで、どこにでもいそうな“普通の人”ばかりだ。そのため、成功物語を求める人には物足りなさが残るかもしれない。しかし、個人の才能ではなく仕組みで問題解決を実現している各ケースからは、カリスマ経営者の伝記を読むこと以上の気づきを得る瞬間がある。

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