異質を取り込む“ポスト”PMIの視点

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日本企業によるグローバルカンパニーの大規模買収が増えているが、期待したほどのシナジーを生み出せていないようだ。気鋭の経営学者とコンサルタントがそれぞれの視点から議論し、インサイトを導き出す対談の第5回は、異質な文化の融合と買収先からグローバルマネジメントを学ぶ方法について考える。

グローバルな子会社を持て余す日本企業

日置 この対談では、日本企業がグローバル環境に適応した経営をどのように行うべきかについて議論を重ねていますが、多くの企業がグローバル化を意識して取り組んでいる手段の1つに、海外企業のM&Aがあります。

入山 2000年代に入ってから、いくつかの日本企業が大きな海外企業を買収していますね。

日置 ですが、第1回でも述べたように、経営のグローバル化につながっているとは言い切れません。、まだまだ海外展開の延長のようにも見えてしまいますが、とはいえ海外企業のM&Aが有効な手段であることは間違いありません。
 M&Aは大きく、PreとPostという前後半2つのフェーズに分けられますが、前回、Ciscoの例で説明していただいたM&A後の統合、すなわちPMI(Post Merger Integration)を中心に、日本企業のグローバル化を考えてみたいと思います。

入山 いきなり核心に触れますが、統合という点ではうまくいっていないことが多いのでしょうか。被買収企業がグローバルで組織や仕組みをすでにある程度整えている場合、それができていない日本企業が買収後にうまくコントロールするのは難しい気がします。

日置 そうなんです。とはいえ、いざこざがあって離れていく関係でもないので、その意味ではうまくやっているのでしょうが、何のために買ったのか、事前の意図はどうなったのかはあいまいなケースが多いようです。日本企業は買収前は統合に意欲的なのに、買収後は合わせる基準となるはずの日本企業側の仕組みがバラバラなので、相手は合わせようにも合わせられない。結果、「決算数字だけ報告してください」と言って相手に任せてしまう。「ビジネスは相手(現地)のほうがよく分かっている」というのは、自分たちに都合のよい言い訳です。これでは、買収によって潜在力を発揮させシナジーを生み出すことなどできないのも当然です。

入山 なるほど、連結決算での足し算にしかなっていない、ということですね。自分より大きな企業を買ったところは、もっと如実にそのような状況になるのではないでしょうか。

日置 日本企業同士のM&Aでも、純粋持ち株にして対等にぶら下げ、統合ではなく結合しているだけというケースも多いですからね。トランジションにおける一形態としては、わからなくもないですが。ある程度のプレゼンスを持つ海外企業を買収した場合は、資金だけ出して事業運営は従来のまま、という「もの言わぬ株主」になっているようにも見えます。逆に買収した会社から「もの言われる」ことが多かったりして(笑)。この不可思議な経営体制は、真の株主から突き上げられる可能性があるのですが……。

入山 勿論、製薬のようにほぼ単一事業で、統合しなければ本当にM&Aの意味がなくなってしまうような業界では、経営者に外国人を起用するなど、グローバル化の契機にしようとしている姿勢が見えますね。経営陣の危機感と強い意思を感じます。

日置 製薬はグローバルレベルでの業界再編が進み、その中でグローバルファーマにならなければという意識が強いので、海外の大型買収を機に、これまでの企業運営のあり方を変えていこうとしていて、海外買収を梃子にした日本企業のグローバル化の一つの成功のかたちになればと思います。

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