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IoTで家と職場、そしてビジネスはどう変わるか

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見かけ倒しのガジェットではなく、真に有益なIoT製品をつくるには何が必要だろうか。MITメディアラボでIoT開発の前線に立つ人物が語る。その要諦は「人々の行動様式を、無理に変えようとしない」デザインのようだ。本誌2015年4月号特集「IoTの衝撃」関連記事。

 

 デイビッド・ローズは、ソーシャルメディア上に投稿されたブランド関連の画像を解析し企業のマーケティングを支援する会社、ディットー(Ditto)のCEOである。そしてMITメディアラボの客員研究員であり、バイタリティのCEOも務める。同社が製造するグローキャップ(GlowCap)は、インターネットに接続し服用を管理する薬用容器としては初のものだ。そして彼は、インターネットとモノをつなぐ技術が未来をどう変えるかを描いたEnchanted Objects: Design, Human Desire, and the Internet of Things の著者でもある。

 私はローズに電話インタビューを行い、どうすればモノが「魅惑的」になるのか、人々は新しいガジェットをどう使うようになるのか、それらを製造する企業が学ぶべきことは何かを尋ねた。本記事ではその内容を一部編集して紹介する。

HBR:あなたは「インターネット・オブ・シングズ」とはあまり言わずに、「魅惑的なモノ(enchanted objects)」という言葉を用いていますね。なぜでしょうか。

 呼び方は、「パーベイシブ・コンピューティング(pervasive computing)」でも「考えるモノたち(things that think)」でも、「スマート・シングズ」でも構いません。でも私は「魅惑的なモノ」と呼んでいます。安価なシリコンやネットワークが可能にしたこの新しい技術で、何をつくろうか、何をつくれるのかと考える時、最もよいインスピレーションの源泉となるのは物語世界だと思うのです。アンデルセンやグリム兄弟の童話、ハリー・ポッター、トールキンの「中つ国」、ジェームズ・ボンドなどのスパイものには、人々の願望が表れています。こうした物語の中には、全知の能力、テレパシー、物の保管、表現などに関する人々のニーズや欲求を満たす「魅惑的なモノ」が登場します。デザイナーは、テクノロジーを使って何ができるかではなく、「人間のどんな心理的欲求を満たすべきか」をまず考えるべきなのです。

――あなたが紹介する魅惑的なモノのいくつかは、素晴らしいと思えます。たとえば〈グーグル・ラティテュード・ドアベル〉は、自宅に家族が近づいていることを1人ずつ違う音で知らせてくれます。まるでハリー・ポッターのウィーズリー家にある魔法の時計のようですね。しかし、こういうドアベルは実際にどれほど必要とされ、どう役立つのでしょうか。

 我が家での使い方を説明しましょう。夕方になると、家族が今どこにいて、誰が何時に帰宅するのか、誰が誰を迎えに行くのか、はっきりわからずバタバタします。朝に皆が出かける時や夕方の帰宅時など、1日のうちで最も気が焦り、調整やタイミングの検討が必要な時間帯があります。

 アップルが提供する解決策は、「友達を探す」というアプリです。ただしこのアプリには、人の居場所を常に地図上に表示してしまうという欠点があります。いくら家族でも、これでは少々やりすぎでしょう。そこで、私は情報をやや曖昧にして、過度に注意を払わなくてもよい形(音のみのインターフェース)にしたいと考えました。たとえば、ウィーズリー家の台所にある時計は、家族の居場所のみならず、「生死の危機」など各人の状態まで教えてくれますが、この時計は家族が過ごす台所にあるからこそ便利なインターフェースなのです。アプリを立ち上げる必要もない。ネットにつながったドアベルは、家族の誰が10マイル先、1マイル先にいるか、近所に戻っているかを教えてくれます。煩わしい思いをさせずに距離感を示すのです。

 人々の日々の動作・振る舞い、そして手に触れ使うもの――引き出しの取っ手やドアノブなどです――それらにいかに着目し、そこに情報をどう埋め込むか。これが重要な問いになります。

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