勝つ意志はあるのか?勝利の定義は明確か?

これからの日本企業に求められる人事・組織の考え方(1)

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本連載では、前回までP&Gジャパンの人事・組織変革を軸に、その取り組みをリードした会田秀和氏の経験を聞いた。今回からは、「これからの日本企業に求められる人事・組織の考え方、あり方」というテーマを考えたい。会田氏の最初の問いは、「このままで勝てるのか」「本当に勝つ意志があるのか」というものだ。

グローバル化、イノベーションの
ための変革を

 日本企業はいま大きな曲がり角に差しかかっている。この種の言い回しは時代に関係なく使われる常套句のようなものだが、「いま」は正真正銘、そのときだと思う。

 1990年代以降、日本経済は低迷を続けている。幅広い産業における日本企業の圧倒的な強みは色あせ、韓国や中国の企業に追い抜かれた分野も少なくない。日本企業は再びイノベーションの能力を取り戻す必要がある。

 また、グローバル化のステージも変化している。製造業についていえば、以前は新興国に生産拠点を置き、先進国に運んで売るというモデルが主流だった。いまは世界の最適地で生産し、世界中で売る時代だ。グローバルなバリューチェーンを設計し、適切に運用する能力、現地マーケットを理解し深く入り込む覚悟が求められている。

 今後の10年、20年先を見たとき、いまの組織や仕組みを維持したままで成長することは可能だろうか。成長どころか、生き残ることさえ難しいだろう。それが、グローバル競争の現実である。「自らを変えること」を拒否すれば、どんなエクセレントカンパニーも安泰とはいえない。

 変革の方向性は、企業の戦略によって異なるだろう。その前に私が問いたいのは、本当に「グローバルで勝つ」という強い意志があるのかということだ。

 おそらく、経営者の多くは「そんなことは当たり前だ」と答えるだろう。ならば、重ねて問う。「勝利の定義は明確ですか」と。

 勝利の定義にはさまざまなものがありうる。売り上げや利益、市場シェアなどが主要なものだろう。日本企業でよく見かけるのは、売り上げまたは利益について「前年比○%の成長」といった“対前年主義”の目標だけを掲げるケースだ。しかし、これだけでは勝利の定義とは呼べない。

 市場が活況を呈していれば、自社とライバル会社は揃って勝つ可能性が高い。逆に、世界的な経済危機でも発生すれば、業界の全社が負けることになる。勝利の定義というからには、勝ち負けが明確に線引きできるものでなければならない。おそらく、最も適した指標が市場シェアである。これを除外した定義は、実質的な効力を持たないのではないだろうか。

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