イノベーションのやり方を変えれば
日本の製造業は復活する

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かつて日本経済を牽引してきた製造業が低迷を続けている。革新的な製品が生まれないのは、技術力が弱くなったからか、あるいはマーケティングの問題か。むしろ大きな要因は、イノベーションの手法が従来のやり方に縛られているからに違いない。

 

自前主義を捨てる。もはや一社では勝てない

 かつて日本経済を牽引した製造業ですが、その低迷が続いています。

 技術力ではいまなお世界レベルを誇る日本の製造業が、新しい革新的な製品の開発に苦慮している姿が目立ちます。従来の製品開発のやり方を見直す必要に迫られているなか、オープンイノベーションは日本企業が取り組んでみる価値のある手法でしょう。

 オープンイノベーションは、元々カリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウ氏が提唱した概念で、企業の境界線を越えて実現させる共創型のイノベーションのことです。P&Gはこの手法を積極的に活用し、製品開発のスピード化に成功しました。日本でも2008年 に同氏の著書が刊行されて話題に上るようになりましたが、本格的に活用している企業は少なかったです。世界的グローバル企業の取り組みも、日本企業にとって遠い「向こうの話し」に感じられたのかもしれません。また「イノベーション」という言葉が、清水の舞台から飛び降りるような大胆な決断を伴うもの、という誤解があるのかもしれません。

 本書『オープンイノベーションの教科書』を読むと、日本の企業が新製品開発の競争に遅れた理由と、それらへの対処法に説得力があります。著者は、オープンイノベーションを「モノづくりの過程で見えてきた課題に対し、自分たちだけで解決することにこだわらず、必要に応じて社外から最適な策を探し出すことで、より迅速に課題を解決するための手段」と定義しています。つまり課題解決を自前主義にこだわらないのが世界の潮流なのです。

 これは日本企業の良さでもあるのですが、「自ら開発してこそメーカーである」という価値観が存在します。そして苦労してでも開発することの美学が浸透し、自分に足りないものを他者から借りてくる選択を「よしとしない」清さがあります。

 この心意気は技術者としての誇りでもありますが、一社のみで開発でないほど製品構造が複雑化しているのも確かです。ソフトウェアの技術一つとっても、いまや無数の技術の組み合わせから構成されていて状況に応じた複雑な動作を可能にしています。

 一方で自前主義は時間がかかります。今日の開発はスピードこそ成功の大きなカギとなる。オープンイノベーションは時間を買う戦略といえます。そしてまた、自社の技術を市場で最大化させるための方法論といえます。

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