M&Aを単なる「イベント」で終わらせるな

グローバル経営を考える【最終回】

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サントリーによるウイスキーのビーム社買収、ソフトバンクによる携帯電話オペレータースプリント社の買収など、日本企業による海外企業の大型買収が目立っている。企業がグローバル化を進める上での常套手段となったM&Aであるが、それを成功させるためのプロセスと課題について考える。

活況を呈するグローバルなM&A市場

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平野正雄(ひらの・まさお)
早稲田大学ビジネススクール教授。 スタンフォード大学大学院経済工学修士。工学博士(東京大学。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、カーライルグループ日本共同代表等を歴任。専門はグローバル戦略、ジェネラルマネジメント。

 日本企業による海外企業の大型買収が目立っている。サントリーによるウイスキーの米国ビーム社、大塚製薬によるバイオ創薬のアバニア社、リクシルによる高級水栓金具のグローエ社、あるいはソフトバンクによる携帯電話オペレータのスプリント社の買収など、一見すると目白押しである。このように日本企業を海外企業の買収に駆り立てているものは何であろうか。また、海外企業の買収を成功させることは難しいと言われるが、その困難は何に起因するのだろうか。成功の確立を上げるために、抑えるべきポイントは何であろうか。連載3回目では、いまや企業がグローバル化を進める上での常套手段となった海外企業のM&Aとその課題について考えてみたい。

 まず、事実の確認から入ろう。2014年は、世界的なM&Aブームの年であった。マージャマーケット社の調査によれば、2014年一年間でM&Aへの投資額は3.3兆ドルと巨大である。一方、日本企業による買収投資額は同年で約300億ドル、つまり世界シェアのわずか1%弱に過ぎない。我々は日本企業によるM&Aがいかにも活発なように感じているのだが、実態は世界企業による買収合戦の方がはるかに凄まじい規模で発生していることになる。M&Aは業界再編や事業改革を実現する有力手段であるだけに、世界規模と比較した場合の日本企業のM&Aへの取り組みの見劣りは、そのまま改革のスピードや程度に対する懸念にもつながっていることもまた事実である。なぜ、日本企業によるM&Aは進まないのか。そこには日本企業の経営体質上の問題もあるはずだ。まずは、M&Aの技術的な側面を論じながら、特に買収後の統合段階で露呈しがちな経営体質の問題に迫ってみたい。

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