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AH(自動仮説):
データから問いや仮説が生成される時代

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アナリティクスの発展によって、答えではなく問いや仮説が自動的に生成される――そんな「AH」(automated hypothesis:自動仮説)の時代が見えてきた。それはイノベーションにどう影響するのだろうか。

 

 データが「ビッグ」であればあるほど、予測分析(predictive analytics)がもたらす利益と成果も大きくなる。これはすでに広く知られている通念だ。しかし、未来を予測するよりもみずからつくり出そうと努めるイノベーターは、最先端の科学者たちがビッグデータをどう扱っているかに注視すべきだ。AI(人工知能)は、「AH」(automated hypothesis:自動仮説)にその座を明け渡しつつある。今後はAIではなくAHこそが、画期的なイノベーションを喚起するようになるだろう。

 2014年10月にエコノミスト誌はこう報じている。「現在、仮説生成ソフトの開発を進めている科学者のグループは90以上に及ぶ。その目標は、公開データベースに蓄積された膨大な数の科学文献(ある集計によれば、少なくとも5000万本の科学論文)を読み込ませて仮説を生成することだ」(英語記事)。つまり、世界各地でデータ主義の科学者たちが、コンピュータは膨大な量のデータがあれば仮説を提案できるほど創造的で発想力に富むものになると考え、その実現に注力しているのだ。

 この構想は魅力的だ。データを問題解決のために利用するのではなく、AH技術は解決すべき興味深い問題群を生成する(英語記事)。もっと正確に言うと、検証すべき仮説を提示してくれる。グローバル企業も起業家も、ビッグデータを用いて、イノベーションや新たな価値創造に関するビジネス仮説を生み出せるようになるのだ。メディア消費でいえば、お勧めの本やテレビ番組を提示するレコメンデーション・エンジンとは違い、AHエンジンは(まだ存在しない)新しいタイトルやコンセプトを生成し提案してくれるわけだ。アマゾンやネットフリックスが膨大なデータを活用して、顧客やパートナーに向けた新たな製品やサービスをAHで生み出そうと考えないはずはない。

 クオンツ系ヘッジファンド(定性評価ではなくコンピュータのモデルに従って投資するヘッジファンド)の大多数も、間違いなくAHを活用していくだろう。これらの秘密主義の投資機関は、取引戦略や投資テーマを絶えず提案してくれる自社独自のAHエンジンを持ち、見直しと調整に役立てる。悪名高い「フラッシュ・ボーイズ」(証券市場での注文を10億分の1秒の差で先回りしていく、超高速取引業者)による「高頻度アルゴリズム取引」は見事だが、その利益は取引執行の速さによるものだ。ビッグデータのグローバル規模での相互運用性によって、投資ポートフォリオを適切に運用するには「投資仮説」をうまく管理することが必須となった。

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