シティの実例が示す
オープン型オフィス導入のコツ

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シティのニューヨーク人事本部はオフィスの有効利用を図るために、従業員個々人の座席指定を廃し、代わりに職能単位の共有エリア「ネイバーフッド」を設けた。その意図と効果は? 本誌2015年3月号の特集「オフィスの生産性」関連記事。

 

 オフィス空間の設計を考えるにあたり、ディストピア小説の世界を参考にするとはおかしな話だと思われるかもしれない。しかし、それをやったのが金融機関のシティである。

 シティのマネージング・ディレクター兼人事担当COO(最高執行責任者)スーザン・カタラーノは、人事部の新たな仕事場の設計をサポートするよう求められた。間仕切りのないオープン型のフロアにするという計画だ。ちょうどその時、彼女は『ダイバージェント』3部作を読んでいた。このSF小説では、人々は5つの共同体に振り分けられ、それぞれ異なる美徳を推進するという未来社会が描かれている。この小説の世界がフロアの設計に影響を及ぼしたのだ。カタラーノはこう説明する――「フロアには“ネイバーフッド”(近隣区域)と呼ぶエリアをいくつか設けました。報酬管理の人々から成るネイバーフッド、学習・能力開発部のネイバーフッドというように分けることによって、誰も所定の作業空間や個室を持たなくても、自分の居場所があると感じられるようにしたのです」

 職場に関する研究を行う非営利機関のファミリーズ・アンド・ワーク・インスティテュートによれば、作業空間のあり方は優れた職場の条件としてますます重要になっている。物理的な職場環境を適切に整えれば、優れた職場に見られる要素――コラボレーション、自主性、仕事と私生活の調和、学習など――を向上させることができる。しかし、HBRの特集『オフィスの生産性』で複数の論文が述べているように、これは口で言うほどたやすいことではない。

 新たな仕事場の設計にあたり、カタラーノ率いるチームはさまざまな問題に直面した。「決まった席がない場所で、カバンなどの私物をどこに置くのか」、「大声で話すのをやめさせるにはどうすればよいか」といった些細なこともあれば、「専門分野で分けられている従業員たちが、オープンで協力的になるにはどうすればよいか」という重要な課題もあった。

 カタラーノの案件は、仕事場の最適化を図る「シティワークス」と呼ばれる全社的な取り組みのテストケースであった。その目的は2つの問題に対処することだ。第1に、人事部門の従業員たちは都心部のあちこちのオフィスに分散されていたため、一体感に欠けていた。第2に、これは世の多くの職場にも当てはまるが、いくつかのオフィスが有効活用されていないことが社内調査で明らかになった。出張や休暇、病欠、フレックス制度などが理由だ。

 検討の結果、人事部の全チームをロングアイランドのオフィスに集約し、フロア全体でニューヨーク市を管轄することになった。フロアの周縁部にはワークステーションが並べられ、それぞれに大きなモニターが2つ設置されている。フロアの中央には、大小複数の会議室のほか、集中して仕事をしたい人向けの個人スペースがある。腰を下ろせる居心地の良いエリアや、数人が集ったり昼食を共にできるエリアも、フロアのあちこちに設けられている。

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