企業とNPOの協働が次のイノベーション創出を加速する

【特別対談1】小沼大地(NPO法人クロスフィールズ 共同創業者・代表理事)

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新興国NPOとの協働の最前線で見える日本の潜在力

藤井 大きく空気が変化してきたとはいえ、まだまだNPOと連携する意義を理解している日本企業の経営者は限られています。そもそも、優秀かつ熱意ある人材がソーシャルセクターに集まっていること自体が十分に認知されていません。

小沼 日本国内ではまだまだこれからですが、海外ではソーシャルセクターに本当に優秀な人材が集まってきていると感じますね。新興国のNPOにはその国の最も優秀な人材が集まっていて、彼らがインパクトあるイノベーティブな活動を推進しています。しかし、そのことは日本企業の経営者層にはほとんど認知されていないと思います。
 留職プログラムでは、日本企業の幹部候補生が海外NPOに派遣されるわけですが、多くの場合、現地NPOのスタッフの方々の熱意と優秀さとに、圧倒されてしまいます。CFとしても、留職とは新興国のリーダーたちの下に「弟子入り」する修行の旅だと捉えているところもあります。

藤井 私は、留職においては、各企業の人材特性を理解した上で、どのNPOとマッチングするかの設計が重要で、CFさんの事業の強みは、丁寧なマッチングにこだわっていらっしゃることだと思っています。日本企業がCFさんに対して感じる価値もそこにある。逆に言えば、まだまだ日本企業にとってはどの現地NPOとどのように連携してよいか極めて未知な状態だと言えます。そもそも現地のNPOは日本企業との連携にどんな期待感を持っているのでしょうか。

小沼 多くの新興国、途上国の現場では、日本企業がリスペクトされていることが多いため、派遣されてくる人材の技術力や姿勢から何かを学び取りたいと考えるNPOが比較的多いのです。ただし先ほど申し上げたように、実際には現地の優秀な人材の活躍を目の当たりにして打ちひしがれるケースもあります。そんなときにも現地のNPOから日本人が評価されるポイントは、実は日本人の「真面目さ」だったりします。NPOから直接の報酬はもらっていないのになぜそんなに一生懸命自分たちのために働いてくれるのか、そこまでやってくれるのなら一緒に何か成し遂げようじゃないか、と感じさせる「何か」を日本人は必ず持っているのです。

藤井 それは面白いですね。実はそのような気質は、日本企業および日本人が有する、世界的にも競争力のある“見えないアセット”かもしれませんね。

小沼 はい、私もとても面白いと思っています。さらに言えば、日本企業の創業理念からくる精神性のようなものも同様に“見えないアセット”かもしれません。
 以前、留職プログラムの受け入れについてインドのNPOと打ち合わせをした際に、「A社はエアコンを作っている会社だろ?」と聞かれたので「確かに1製品としてエアコンを作っているが、それ以前に、ものづくりを通じて国と社会をよくしようと本気で考えている会社だ」という話をすると「ウソをつくな。インド企業はみんな金もうけしか考えてないぞ。確かめてやるからそいつらを連れてこい」と。留職後あらためて話をしてみると、「お前の言っていたことは正しかった。A社から来たあいつは確かに本気で技術を通して国をよくしようと考えていた。これから家の家電は全部A社にする」と(笑)。

藤井 日本人が本質的に有する社会性のようなものは、東日本大震災においても世界から賞賛を集めました。日本はまだ、このようなアセットを“CSV力”にまで十分に昇華しきれていないのかもしれませんね。

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