テラモーターズは、なぜ、EVでアジアなのか

徳重徹(テラモーターズ代表取締役社長)
×石倉洋子【特別対談5】

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石倉洋子・一橋大学名誉教授がさまざまな分野で活躍している次世代リーダーたちとグローバル人材の要件を探る対談シリーズ5回目は、電動(EV)二輪車メーカーを創業し、創業当時から戦略的にアジアへの展開を進めているテラモーターズの徳重徹社長に、なぜメガベンチャーを目指し、アジアなのか、その熱い思いを聞いた。 

グローバル化を前提に事業を展開する

徳重 徹
テラモーターズ 代表取締役社長

1970年山口県生まれ。九州大学工学部を卒業後、住友海上火災保険に入社。30歳で退社してサンダーバード国際経営大学院でMBA取得。その後シリコンバレーでベンチャー投資の支援業務に就き、帰国後、2010年4月に電動バイクの開発・設計・販売を行うテラモーターズを創業。

石倉 テラモーターズの事業展開はもちろん、徳重さんご自身も注目されていますね。そのユニークなご経歴について聞きたいことは山ほどあるのですが、まずはテラモーターズの事業についてお聞きしましょう。

徳重 テラモーターズは、「電動(EV)バイク、電動三輪車のメーカー」として、2010年4月に創業し、国内販売台数は年間3000台になりました。2014年秋からはベトナムでの販売を始め、2カ月で500台を売りました。バングラデシュでの販売も開始してアジア展開を本格化します。アジアには日本の100倍以上の市場がありますから。

石倉 販売価格はどれぐらいですか。

徳重 ベトナムでは現在、4500ドルにしています。

石倉 ちょっと高いのではないですか。ベトナムでは、英語に堪能な大卒でも初任給は2~3万円位と思いますが。

徳重 ブランドを構築するための政策的な価格でもあるのですが、2015年以降は少しずつ安い価格帯の製品も出していこうと考えています。

石倉 アジアの新興国ではバイクが移動手段の主役であることはよくわかるのですが、あらためて、なぜEV(電動)バイクなのですか。

徳重 第一の理由はガソリン価格が高いことです。アジアの人たちの給与水準はまだ低くて、バイクを所有すると燃料費負担が重くのしかかります。それに比べると、EVの燃費は圧倒的にいいのです。

石倉洋子
一橋大学 名誉教授

 またアジア市場では、バイクといえばホンダの「カブ」で、あれがすべての原型になっています。価格は安いし、燃費も走行性能もよい。ツーストロークエン ジンがフォーストロークになって、さらに燃費がよくなった。現地の消費者は、カブに対する信頼を他の日本製品にも向けてくれます。信頼というビジネスの “土壌”の上に、自らのビジネスを展開できるのです。「日本製品は信頼できる」という前提があるので、日本のメーカーにとって有利です。

石倉 中国の状況も同じですか。

徳重 中国ではすでに2005年から、販売量ではEVバイクがガソリンバイクを上回り、その差が拡大しています。そのためメーカーはたくさんあるのですが、ハイアールやファーウェイといったグローバル企業への道を歩んでいるメーカーはありません。

石倉 なぜ、ないのですか。

徳重 中国のメーカーは、国内市場だけを見ていますし、開発ではコピーのコピーが出回り、ブランディングやプロモーション、品質の向上、メンテナンス体制の整備といったことをきっちりとやっているメーカーは皆無です。

石倉 でもこれから出てくる可能性はあるのでは。

徳重 可能性はあるとは思います。ただ、この分野は、先行者利得が大きいので、自社のポジションをいかに早く築き上げるかがポイントになります。ベトナムで売られている中国製のEVバイクを見ても、ショップの親父さんが自分で1台ずつ仕入れて売っているような状態でして、メーカーとして市場をとろうという取り組みはありません。しかも売っている製品は、ヤマハのパクリだよね、といった具合です。

石倉 テラモーターズのEV、技術の差別化ポイントはどこにあるのですか。

徳重 肝は、やはりバッテリー・マネジメント・システムなど電池の技術ですね。その上で私たちはベトナムのパートナーたちと独自のショールームを開設しています。メーカーが責任を持って販売に取り組む姿勢を見せることで、私たちが第一人者という地位を確立しようとしています。ショールームはすでに15店舗ほどあります。アジアの中間層の現在の夢は、スマホとバイクに金をかけることです。だからショールームでというバイクの見せ方には気を使っています。
 また、ありがたいことに東南アジアではホンダとヤマハを筆頭に、日系メーカーがバイク市場の9割を握っており、これほど日本製品が強い市場はありません。一方で、中国製品には信用がない。そうした日系メーカーの信頼があり、かつこれまでガソリン・エンジンを中心としてきたホンダやヤマハが進出しにくい分野としてEVバイクがあります。事業機会は巨大だと感じます。

石倉 最初から、EVに目をつけられたのですか。

徳重 シリコンバレーから戻って3年間ぐらい、「自分は何をやろうか」とずっと考えていました。とにかく、グローバルでイノベーティブなことがしたかった。考え抜いた先に、市場があること、競合に勝てること、社会性があること、そして自分の思い入れがあることの4つの“基準”が見えてきました。
 では具体的に何をするのか……悶々としていたときにシリコンバレーの友人からテスラモーターズの取り組みを聞き、EVバイクに注目しました。医療や環境ビジネスにも注目していましたが、EVが自分の4基準に最も合致していたのです。大胆だがやりがいのある、グローバルでイノベーティブな事業だと思いました。アジア市場への取り組みも、そもそもが、アジア市場を変革する社会性がある事業だからこそ当然のものでした。

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