その日、その週に何回、
“初めてのこと”をしたのか

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世界のエグゼクティブの間でひそかに共有されているスピーチがある。20世紀後半のアメリカを代表する知識人、ジョン・ガードナーが説いた「自己革新」(self-renewal)の教えだ。『ファストカンパニー』の創刊者テイラーは、自己革新の核となる「好奇心と学習」をリーダーの最も重要な資質であると強調する。

 

 ジョン・W・ガードナーは四半世紀ほど前にアリゾナ州フェニックスで、アメリカのビジネス史において秘かに最も影響力を持つと思われるスピーチをした。その原稿は世界を代表する企業や組織の上級幹部たちにコピーされて広められ、その重要性が強調され、リンクされてきた(英語原文)。しかし、それらのリーダーのうち(そしてビジネス界全般において)はたして何人が、あの日ガードナーが伝えようとしたメッセージを本当に理解しているだろうか。

 2002年に89歳でこの世を去ったガードナーは、伝説的に有名な知識人であり、市民社会の改革者でもあった。スタンフォード大学の高名な教授で、リンドン・ジョンソン政権では「偉大な社会」政策を推進。政府系非営利団体コモン・コーズとインディペンデント・セクターの創設にも携わった。

 1990年11月10日の彼のスピーチは、世界で最も裕福で有力な企業の成功に貢献してきたコンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーの会議の場で行われた。この日の彼のテーマはお金でも権力でもなく、「自己革新」についてだった。変化を起こし、成果を出し続けたいと考えるリーダーたちに、継続的な学習を通して成長していくことの重要性を説いたのだ。ガードナーは学習の重要性に強い信念を持っていたので、聴衆にそのメッセージを届けるべく、演説の全文をあらかじめ書き起こしていた。なぜなら、「一文一文をしっかり理解してほしかった」からだ。

 そのメッセージを紹介しよう。「職場で多くの人々は、自覚している以上にやる気を失い、マンネリ化して無気力になっています。マンネリ化は、大企業が知らず知らずのうちに陥る病なのです。先日ある人から、『こんなに忙しいのに、どうして全然やる気が出ないのだろう』と相談され、私は『理由はいくつもあります』と答えました。周りを見回してください。あなたのよく知る人たちの中で――自分より若い人も含め――決まり切った考え方や習慣にとらわれている人はどのくらいいるでしょうか」

 では、マンネリ化の反対、すなわち固定的な考えや習慣から抜け出すために学習、成長、変化を続けるうえで必要な資質とは何だろうか。ガードナーは、野心家のマッキンゼーの戦略家たちに「野心といった小さなことではありません」とくぎを刺した。「野心はやがて衰えていきます。むしろ、そうあるべきでしょう。それでも人は死ぬまで活力を持って生きられるものです」とガードナーは語ると、会議室に集まった優秀なリーダーたちにシンプルな格言を与えた――「好奇心を持ってください」と強く促したのだ。「だれもが面白い人間になろうとしますが、そうではなく好奇心を持つことが活力となるのです。『本当に大切なのは、知っていることについて後から学ぶ何かである』という格言の通りです」

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