地政学の変化がビジネスを変える

ASEANフォーサイト2025

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2014年は、EU・東アジア(香港問題)等の地政学の変化がビジネスに影響を与え始めた年として記憶されることだろう。その動きは2015年末のAEC(ASEAN経済共同体)発足に向けて加速する一方、AEC発足後の実体経済の先行きを懸念する声がある。国家間の新たな枠組みや地政学的変化はビジネスに対してどのような示唆をもたらすのだろうか。

ASEAN経済共同体は欧州連合(EU)をマネたのか?

 国際協力銀行(JBIC)の「海外直接投資アンケート結果(2014年度)」によれば、日本企業の海外直接投資の有望国として第1位にインドネシアが挙げられている。長らく中国が1位の座を占めてきたが、2013年度にASEAN(インドネシア)がその座に取って代わった。2014年度の調査では、第4位、5位、10位にタイ、ベトナム、ミャンマーも食い込み、「ASEAN諸国の存在感は依然高い」と指摘され、実際、日本企業のASEANシフトは続いている。

 ASEANにバラ色の未来が広がっている――そう考えがちだが、必ずしもそうとは言い切れない。

 1967年の発足以来、東南アジアの政治・安全保障、経済、社会・文化および対外諸国との関係等を議論するASEAN・東南アジア諸国連合は、2015年末にASEAN経済共同体(AEC)として加盟10カ国が一つにまとまり、人口7億人規模の一大経済圏が誕生する。

 AECは一見、EUのASEAN版に映る。両者は「統一通貨を設けない」「域内でのヒトの移動は熟練労働者に限定」と相違点はあるものの、「域内の関税撤廃」「貿易の円滑化」「投資の自由化」「知的所有権の保護」といった似通った枠組みが見られる。ヒト、モノ、カネ(投資)、サービスが自由に移動する体制を作り、域内経済全体の成長と海外からの投資拡大を図ろうというわけだが、AECは共同体に各国の財政状況を監視する機能を持たず、通貨統合の目標があるわけでもない。既に関税も段階的に引き下げられており、今後の改善余地がどこまであるかは疑問だ。実際のところEU型経済統合とは異なる。

 デロイトが、世界の企業向けに「AEC発足後のインパクトをどう受け止めているか、誰にとって影響があるか」というアンケート調査を実施したところ、調査対象によって受け止め方が随分異なることがわかった。

© 2014 Deloitte Southeast Asia Ltd


 例えば、多国籍企業の70%近くが「事業機会」と捉えたことに対し、政府系企業では16%、中小企業では9%しか好意的に捉えていない。むしろ政府系企業では58%、中小企業では76%が「脅威」と受け止めている。また、AEC構想の実効性については全体のうち56%が「限定的」と回答している。

 それでは、ASEANの伸びシロは限定的なのだろうか。

 それは違う。人口ボーナスに恵まれ、インフラの改善が見込まれるなど、市場の魅力度は間違いなく高まる。大事な点は、大きく掲げられた政策ビジョンにだけ目を奪われることなく、確実に変化していく根底潮流を見極めていくことだろう。

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