経営幹部はなぜ
「1ランク下」の仕事をしてしまうのか

1

「目標を明確に」はマネジメントの合言葉の1つだ。しかしトップダウンによる詳細な計画の提示には、担当チームの創造性を抑制するという一面もある。目標管理のシンプル化を説く本記事は、LINEのCEO森川亮氏が本誌2015年2月号で述べることと通底する。つまり、開発志向のマネジメントにおいて「計画は不要」でさえあるということだ。

 

 1942年8月、バーナード・モントゴメリー陸軍大将はイギリス第8軍の司令官として北アフリカ戦線に到着した。赴任後数日以内に、彼は上級士官たちの交代人事に着手する。新たに任命された軍団長の1人にブライアン・ホロックスがいた。彼は1940年にフランス戦線で歩兵大隊の隊長としてモントゴメリーの下で働き、その後すぐに師団長に昇進していた(師団は軍団の下位)。

 モントゴメリーはホロックスに、ロンメル率いるドイツ・イタリア枢軸軍の最後の攻撃を阻止する任務を与えた(アラム・ハルファの戦いとして知られる)。イギリス軍の防衛は持ちこたえ、ロンメルは撤退を余儀なくされた。ホロックスは当然ながら自分の功績に満足していたが、そこに第8軍本部から連絡将校がモントゴメリーの書簡を持って現れた。以下がその文面の冒頭である。

「貴君の功績を称える。しかし、貴君はいまや軍団長であって、師団長ではないことを肝に銘じよ……」

 書簡には、それに続いてホロックスが犯した4つか5つの誤りが挙げられていたが、それらは主に部下たちの任務への干渉に関するものだった。指摘を省みたホロックスは、モントゴメリーの言う通りであると悟った。そして電話をかけ、「ご指摘に感謝いたします」と直接伝えた。その後、ホロックスは大戦で最も成功を収めた大将の1人に数えられるまでになる。

 時は一気に飛んで、2012年のこと。

 ある日私は、大成功を収めている某デンマーク企業のR&D部門を率いる経営陣を相手に、ワークショップを行っていた。彼らは有能で、順調な業績を上げていたが、さらなる飛躍を求めていた。

 ワークショップのなかの1回を、彼らが呼ぶ「イノベーション要綱」の検討に充てた。これらの文書は、経営陣の企図する研究開発プロジェクトを明示し、それぞれの責任者を特定し、経営陣直下の階層、すなわちプロジェクト・マネジャーたちに指示を与えるためのものだ。ワークショップで改善できるようにと、経営陣は実際の文書をいくつか持ち込んでいた。

 それらの要綱には多くの優れた内容が盛り込まれていた。プロジェクトに着手する理由の詳細、ユーザーのニーズ、創出される価値、既存ポートフォリオとの適合性、そして製品の技術仕様が、すべて1ページにまとめられていた。だが最初に私が驚いたのは、フォントのサイズが非常に小さく、最終製品の技術的詳細までもがみっちりと記載されていたことだ。あたかも、ここにいる幹部たちの頭の中にはすでに製品が存在しいるかのようだった。プロジェクトチームの仕事は、創造性を発揮して革新的なデザインを見出すことではなく、すでに決められたものをただ組み立てるだけ――そんなふうに感じられたのだ。

1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
HBR目標達成ブログ」の最新記事 » Backnumber
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking