リージョナル・マネジャーに
必要な要件とは

アジア新興国でのリーダーシップを考える(後編)

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「新興国への赴任経験は、これからのマネジメントに不可欠だ。リージョナル・マネジャーの重要性はますます高まっている」。そのように指摘するのは、日産自動車代表取締役副会長・志賀俊之 氏。そして、アジアでの人材争奪戦は激しくなっている――。2014年11月、シンガポールにて開催されたIMDのエグゼクティブ・プログラムOWPを通じた議論を紹介する。アジア新興国でのリーダーシップを考える連載、後編。

 

「これからのグローバル・マネジメントに新興国への赴任経験は不可欠だ。リージョナル・マネジャーの重要性はますます高まっている」。そのように指摘するのは、日産自動車代表取締役副会長・志賀俊之氏である。一連のゴーン改革の指揮を執り日産のグローバル化を推進、自身もかつてインドネシア市場を開拓し、また東風汽車との合弁会社設立をまとめ上げ、長年の課題であった中国進出を果たしている。

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志賀 俊之(しが・としゆき)氏
日産自動車代表取締役副会長。 1976年、日産自動車入社。アジア大洋州営業部ジャカルタ事務所長・企画室長としてインドネシア市場を開拓。1999年、ルノー提携に伴いカルロス・ゴーンがCOOに就任。日産リバイバルプランを立案実行する。2000年常務執行役員、2003年、東風汽車との合弁会社設立、中国戦略の立役者となる。2005年4月COO、同年6月COO・代表取締役。2013年11月より現職。

「いくら技術がよくても、先進国や他の地域で売れた製品であっても、その国にはその国なりの、売れるためのポイントがある」。たとえば、インドネシアの中間層は日本車にステイタスを感じてくれるが、一方で彼らの生活習慣に沿った機能や利便性を備えていなければ割高に感じられてしまうという。それはけっして日本目線の“機能”ではない。言わばそれぞれの文化に、それぞれのパイサ・ヴァスール(金銭に見合う価値) があるのだ。

「そういうことを肌感覚でわかるかどうかがポイントだ」と志賀氏。現地にどっぷり浸かり、カルチャーショックを受け、その人々の言葉にならないニーズを肌感覚でつかめるようになるには、それなりの時間と経験を要するだろう。しかし、「その感覚がなければ、技術だろうがつくり込みだろうが徒労に終わる」。しかも、それは国や地域、文化の数だけ異なってくる。

 グローバル企業のマネジメントは、全体最適と現地最適の両方を熟慮したうえで意思決定がなされる。ただし全体最適を優先する際、現地の感覚を理解し、「切るときの痛みをわかって行うかどうかは大きい」と志賀氏は言う。それは、単にトップダウンによる軋轢を回避するためではない。現地にとっては納得感と学習につながり、またグローバルにとっても机上の意思決定を避けることにつながる。だからこそ、マネジメント人材には異文化経験が欠かせないのだ。

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IMDのエグゼクティブ・プログラムOWPに招聘され、基調講演を行う志賀氏。日産の一連の改革にまつわる話に、参加した30カ国130人の企業幹部から質問が相次いだ。

 IMD教授のマーガレット・コーディング氏も、志賀氏と共通した見解を持つ。自身も米投資銀行を振り出しに、スイス、シンガポールとさまざまな文化において教鞭を執り、ビジネスを推進した経験から、「リージョナル・マネジャーに必要なのは、違いと共通項を見つける能力だ」と指摘する。「自国で成功したパターンを他の国で展開しても成功するとは限らない。だからこそ、違いへの感受性を高め、その国や地域での状況に適応する力が求められる。一方で、経済性の観点から、類似性や共通点を見つける力も欠かせない。これらは本質的に、グローバル・リーダーに求められる要件と変わらない」。

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