アナリティクスによる人事管理は、
どこまで許されるか

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従業員の行動データを収集・分析し人事に活用すれば、より能動的な施策が可能となる。しかし人材マネジメントの専門家ブードローは、アナリティクスが人間性を犠牲にする可能性を危惧し警鐘を鳴らす。

 

 あなたの会社で、マネジャーが部下にこう告げている場面を想像してみよう。「我々のデータ分析では、君はもうすぐこの職場にいることに不安を感じ始め、転職を考えるだろうという予測が出ているんだ。君と同じような人間がうまく定着している他の部門を洗い出したから、キャリアパスの変更をお勧めしたい」

 この部下は、人材分析(HR アナリティクス) のありがたさに驚嘆し、異動のオファーを快く受け入れるだろうか。それとも、ジョージ・オーウェルの描いた監視社会の象徴「ビッグブラザー」を想起し、自分の仕事が生み出すデータを嗅ぎ回る会社に嫌気がさすだろうか。企業は予測分析(predictive analytics)を活用することで、個々の人材に見合った雇用価値を提供し、組織と従業員双方のメリットを最大化できる。だがそれはどの時点で、一線を超え不気味なものとなるのだろうか。

 予測分析の活用目的の1つに、従業員の離職によって生じるコストの削減が挙げられる。2009年のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事によれば、グーグルは従業員の人事考課や昇進、報酬履歴のデータをアルゴリズムで分析し、どの従業員が辞める可能性が高いかを判断しているという(英語記事)。より最近の報道では、グーグルは従業員の離職を予測するために、他に先駆けてビッグデータを活用していると称賛された(英語記事)。同社の人事部門を率いるラズロ・ボックによれば、これにより「離職するかもしれないと本人が考える前に、その意思を人事部が察知する」ことが可能になったという。

 2014年7月にクレディ・スイスも、辞める可能性が高い従業員を人材分析で予測し、別のキャリアパスを積極的に提示していると公表した(英語記事)。同社で人材獲得・開発部門のグローバルリーダーを務めるウィル・ウルフによれば、従業員は提示された新たな役割に興味がない場合でも、「自分にとってより面白く、新しい仕事の機会を会社側がわざわざ見つけようと努めてくれるという事実に、心を動かされている」という。

 気味が悪いだろうか? そうでもないかもしれない――この程度であれば。

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