「行動」をガイドする「制度」デザイン

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日系企業と外資系企業では、グローバル経営を担う人材の差異が明らかである。前回、それぞれの特徴の差異を特定し(コンテクストとコンテンツ)、組織の設計図の目的(WHY)、それを実現する主体・ケイパビリティ(WHAT)を通じて、経営の手段としての使い勝手に大きな差が出ることを説明した。最後に残ったテーマは、組織の構成員たちの「行動」である。

設計図のHOW部分:3つの役割

 前回、設計図におけるコンテンツ部分は、WHY、WHAT、HOWの3つのパートから成ると述べた。これらはリーダーシップのツールとして機能する。特にHOWは、目的(WHY)に向けてケイパビリティ(WHAT)を発揮して、実際にどのような行動をとるかをガイドする重要なパートである。

 HOWは大きく分けると、「目的を実現するためのHOW」「ケイパビリティを成長させるためのHOW」「行動規範としてのHOW」の三つに分類される。それぞれについて、外資系企業の青の組織と日系企業の緑の組織の差異を見ていきたい。

目標を実現するためのHOW

 一つめのHOWは、目的(WHY:ミッションやビジョン)を実現するために必要な行動と、そういう行動をガイドし動機づけるような制度である。その代表として目標管理制度を例にとって説明しよう。目標管理制度は具体的な目標を設定し、その達成度を評価し、評価に応じた報酬を与えるといった形で、行動をガイド・制御する制度である。この制度自体は元来青い組織で生まれたものだが、緑の組織でもごく普通に見られるようになった。しかし、その使用方法は青と緑の間でかなり異なる。

 伝統的な青の組織の場合には、目標管理制度の適用・運用において、設計図の最上位概念のWHYに照らした一貫性が執拗に追及される。たとえば、逸話的になるが、インテルのアンディ・グローブ元CEOは、フロントラインのエンジニアのところにふらりとやってきて、「君の目標は?」と聞いて「これこれです」と答えると、「そこからおれの目標までたどれるか」といって企業全体のWHYとの一貫性をエンジニアの頭の中に立ち入って確かめたそうである。

 また、目標のストレッチと必達のための追い込みの点で容赦がないのも青い組織の特徴だ。GEでは部下が年間目標を設定すると、上司がほとんど必ず上乗せを求めてストレッチさせる。その際、ただ目標をストレッチさせるだけでは決して達成はできない。そこでたとえば1年の目標を3カ月ごとの中間目標に分解し、毎月、面談の形でチェックをいれる。「どこまでできた?」と聞いて、部下が「ここまでです」というと、「このままだと3カ月目標達成できないよね。来月はどうするの?」とたたみかけ、部下から「こうします」という打ち手を引き出すといった会話を通じて、目標達成に向けた行動にどんどん追い込む。同時に、「自分が支援できることがあれば何でもいってくれ」といった上司らしい配慮も怠らない。

 緑の組織の場合も、青と同様の目標管理制度や、それとリンクした報酬の仕組みなどを持つところは決して少なくない。しかし、そのときの状況や空気で目標は平気でいじられる。調子のよい部署の目標は、他の部署が達成できない数字の埋め合わせのために、期中で積み増しされたりする。加えて、目標の達成と評価・報酬の間のリンクがゆるいこともあり、ともすれば目標設定における合理性はないがしろにされて、とにかく目標はなるべく高くしておいた方が仮に達成できなくてもやる気がでるのだといった一昔前の体育会的な発想などがなかなか消えない。

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