eコマースは従来型の小売業を破壊しない

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あらゆるチャネルを融合させる「オムニチャネル」は近年の重要課題だ。しかしいまだに、「ネットかリアルか」という枠組みのなかでeコマースの脅威が誇大に煽られることがある。小売企業が目指すべき方向性を、ベイン・アンド・カンパニーの専門家が示す。

 

 このところ、小売業に関するニュースの見出しはこのうえなく大仰である。「リアル店舗から客がいなくなる」、「ショッピングモールからの大流出」、「アメリカのショッピングモール危機に立ち向かうメイシーズ」(いずれもウォール・ストリート・ジャーナル紙の英語記事)。これらはまるで、2010年代末までには「リアル店舗の小売業は立ちいかなくなり、だれもがeコマースを通じて買うようになる」というマーク・アンドリーセンの予言を支持しているかのようだ(英語記事)。

 残念ながら、背筋が寒くなるようなこれらの記事は、現実から完全に逸脱している。そして実態を把握できずパニックに陥る小売企業は、危険な方向へと向かうことになるだろう。

 デジタル技術が小売業界を一変させていることは、疑いようのない事実だ。デジタル機器は、顧客が商品を見つけ、吟味し、購入し、受領し、使用し、返品する方法を変化させている。そして、オンラインのみで行われる顧客とのインタラクションもますます増えている。過去20年間で、eコマースの売上げは小売業全体の売上げ(ガソリンと外食産業を除く)の約6%、フォレスター・リサーチの発表による上位30の商品カテゴリーの売上げの約11%を占めるまでに成長している。

 しかしeコマースの成長は魅力的ではあるものの、2000年代初頭には年間約30%であった成長率は、今日では半分以下に落ちている。この傾向が続けば、eコマースの売上げは、フォレスターによる上位30位の商品カテゴリーの売上げに占める11%から、2030年までには約18%に増えると思われる。このなかでは伸びるカテゴリー(音楽等)もあれば、低下するカテゴリー(食品等)もある。しかし18%というのは大きな数字ではあるが、必ずしもリアル店舗の終焉を意味するほどではない。

 メディアによる昨今の大げさな警句は、他にも以下のような重要な点を見落としている。

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